空色スパイラル2

□第八十二訓 渡る世間はオバケばかり
1ページ/3ページ



万事屋の四人は、神社の階段を上る。


「あー。
祭りの囃子の音が。」


「いいなァ、みんなお祭り行けて。
私も、ボソボソの焼きそば食べたいアル。」


『わたあめ…チョコバナナ…かき氷…。』


「グダグダ言ってんじゃないよ。
仕方ねーだろ。
こいつは、毎年かぶき町で行われている、恒例の行事なんだから。

毎年交代で町内の誰かが、こーいう役回りやらなきゃいけねーの。
いわば、かぶき町で生きていくための掟だよ。」


『しょうがないっすよね。
でも…食べたかったなぁ。』


「そんなこと言うなって……俺だって、食いに行きたい。

でもな、こいつを毎年とりしきってる役員の、落ってオッさんが、うるさくてよ。」


すると、四人の目の前に足が現れる。


「坂田サン。
打ち合わせするから、昼には来てって、あれほど言ってあったはずだよね。

打ち合わせもナシに大会始めて、ケガ人や事故が出たら、どーするつもりなんだァ!!
もういい!
やる気のない奴は、帰れェェェェェ!!
今年は僕一人でやる!」


階段の先に立っていた、落武者こと落は、そう叫んだ。


「すいませんでした。
じゃっ。」


「よーしっ!!
その一言がききたかった!
もう怒ってないから、戻っておいで。

…アレ?ちょっと?坂田サン!?
あのアレ…西瓜とか一杯あるよ!!坂田サン!!
スイマセンでした、坂田サン!!
調子に乗ってました、坂田サン!!」






四人は、落に西瓜をご馳走になる。


「まったく、頼むよホントに。
こんな時間じゃ、もうリハやる時間もないよ。」


「いや、ホントすいませんでした。」


「いや、すいませんでしたって。君達。
さっきから、すいませんの態度じゃないよね。」


神楽は落の足元に、西瓜の皮を投げつける。


「スイマセンしたっー!!」


「私も、長年生きてきたけどね。
こんな攻撃的なスイマセンでしたは、初めてだよ。

どーするんだ。
このまま、ぶっつけ本番で肝試し始めて、もしケガ人でも出たら。

私の役目はね、毎年この行事を無事、何事もなく。
とり行うことなんだ。
楽しい肝試し大会で事故なんて、絶対あってはならないことだからね。」


『死んでからも、それしか役目がないって…可哀想……。』


「頭に矢が突き刺さってる奴に言われても、しっくりこないアル。
戦でケガはアリアルか?」


「これは事故じゃない、戦だから。
戦で負けて…っていう設定だから、戦でケガはアリだよ。」


「でも、戦も時の為政者達が、てめーの都合で勝手におっ始めた喧嘩であって。
巻きこまれる俺達庶民からすれば、戦も事故と大差ないと、俺は思うね。」


「んだよ、もォォォ!!
この矢を、とればいいのか!
この矢が気にくわないのか!」


『あっ、たぶん刀もっすよ。』


「たぶんって何!!」


空も茜色に染まり、時間が無い事を教える。


「とにかくね。
肝試しにくるような、お客さんってのは。
もう、はしゃいじゃって、ボルテージぐーん上がっちゃってるから。
何するかわかんないの。

だから、気をつけないとホント、思わぬ事故とか怒るからね。」


「心配いらないっスよ。
俺達のボルテージは下がりっぱなしだから。
子供達の、はしゃいでた気持ちも、いつしか沈んでいきますよ。」


「そんな肝試し、嫌だから!
盛り上がんないから!」


「大丈夫ですって、リハなんかしなくても。
ワーキャー言ってりゃ、お客さんもつられて、ワーキャー言いますよ。」


「まっ、僕らに任せて下さい。」


「よし。じゃ行くか。」


銀時は仮面とチェーンソーを持ち、新八は頭に白い幽霊の奴を巻き、スーツとサングラスをしている。
神楽はチェックのシャツにツナギを着て、包丁を持っている。
そして、愛は黒い袴、某漫画の死神の格好をしている。


「おいィィィィィ!!
ワーキャーって何ィィ!?
悲鳴じゃなくて、断末魔のさけび!?

何しにきたの、君達!!
それ、肝試しじゃないよね。
肝取りに、いってるよね!?」


「これ位やんねーと。
今の、すれたガキはびびんないスよ。」


『何であれ、全力で頑張らないと!』


「ダメだって!人の話、きいてる?
ケガとか事故とか、出したくないんだって!!

で、何その格好?
オバケの衣装もってこいって、言ったよね?
お前ら全員、ただの殺人鬼じゃねーか!!」


「本当に怖いもの、それはね……。
人間の心です。」


「オメーの価値観なんて、しりたくもねーよ!!」


愛が手を上げる。


『私は死神なんで、オバケです!!
生きてる人の魂は、魂葬しません。』


「だから、そういうオバケじゃないの!!」


「私も、ちゃんとオバケアルヨ。
カグリーナは、殺人鬼の魂が人形に乗り移った、っていう設定なんだよ。」


「しらねーよ。そんな設定!!
包丁もった、家なき子にしか見えねーよ!!

お前にいたっては、もう何がやりてーのか、わかんねーよ!!」


「アレっスよ。
ヤクザのオバケっス。」


「バカの考え方だよ!
恐いものと恐いものを足したら、ものスゴク恐いものになると思ってる。
バカの考え方だよ!

衣装チェンジだ、衣装チェンジ!
去年使った奴、まだ残ってるから。
とりあえず着替えて!!」


「落さん、すいません。
じゃあ、これ。
ヤクザってのはナシで、ガードマンのオバケにします。
それなら、いいでしょ?」


「いいわけねーだろ。
何それ!?
何、問題解決したみたいな顔してんの!?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ