空色スパイラル2

□第八十一訓 扇風機つけっぱなしで寝ちゃうと お腹こわしちゃうから気をつけて
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二人は、一つのリサイクルショップに行き着く。
名前は、【地球防衛基地】。


「アラ、お侍のお客さんとは、珍しいねェ。
いらっしゃい。」


店の奥には、煙管を吹かした女が一人。


「扇風機。
扇風機あんだろ。
出せや、コラ。」


『扇風機がないと、帰れないんすよ。』


「フー。
【せんぷうき】懐かしい名だね。
アンタら、一体どこからその名を聞いてきたんだい?」


『どこからも何も、日常生活で良く聞くよ。』


「いいから、さっさと出せや。」


「まァ、待ちなよ。
ここまで来たのは、アンタらが初めてさね。
名ぐらい聞かせておくれよ。」


「なんだ、領収書か?
上様でいいよ。」


「上様…。
立派な名前じゃないかィ。」


女は銃を構える。


「じゃあ、あばよ。
上様!!」


銃は、銀時の横にあった壺にあたる。


「うおっ!!」


『きゃっ。』


「なななななな何すんだ、この女!!
店長ォォォ、店長を呼べェェ!!」


「離しなァァ!!
アンタらのような、悪の組織に【せんぷうき】は絶対渡さないよ!!」


『ちょっ…扇風機、そんなに渡したくないんすか!?』


「何、訳わかんねーこと言ってんだ。オイ。
おちつけ。
強盗かなんかと、勘違いしてんのか?

俺ァ、扇風機買いにきただけだ。
ガラの悪さは勘弁してくれ、暑くてイライラしてたんだ。」


その時、背後から銃声が聞こえる。
直後、女の左腕から血が流れた。


「オイ!どうした…!!
げっ!!血!?
店長ォォォォ!!
店長を呼べェェェ!!」


『銀時、落ち着いて。
大丈夫っすか、お姉さん。』


すると、入り口からオッサンの声がする。


「フフフッ。
ついに見つけたぞ、ネズミ共の棲み家を。
まさか、あの女以外に生き残りがいようとは。

だが、今日で貴様らの命運も尽きた。
地球防衛軍よ。」


いかにも悪の親玉みたいな眼帯の男と、ショッカーもどきが立っている。


「…え?俺達のこと言ってんの。
地球…何?」


「とぼけるな貴様!
地球防衛軍の生き残りだろうが!!」


「地球防衛って…。
確かに牛乳パックで本棚つくったり、地球に優しくしたことはあるが。」


『あれかな…。
エアコンに切り替えず、扇風機で生きてるからとか。』


「それにしても、言い過ぎだろ。
やめて、照れるから。」


「とぼけるなっ!
【せんぷうき】を渡せ!!」


銀時と愛は顔を見合わせる。


「…あっ、ひょっとして。
あなた方も扇風機を御購入に?
なんスか。今、レトロブームか何か?

こんなに流行ってるとは、知らなかったスよ。
どうりで買えねーハズだ。」


『いいっすよね。
扇風機とか、ブラウン管とか…。
時代を感じさせて。』


「【せんぷうき】は…。
誰にも渡さないよ。」


女はそう言うと、何かをオッサン達に投げる。


「アンタらなんかに、絶対渡さない!!」


「こっ…これは、ばく…。」


次の瞬間、リサイクルショップは大爆発を起こした。






銀時と愛は、怪我した女を支えながら歩く。


「なんで、扇風機買いにきただけなのに、こんな目に遭わなきゃならねーんだ。」


『今日のブラック星座占いが、天秤座が最下位だったからじゃない?』


「うう…アンタら。
何者か知らないが、悪い奴じゃなさそうだね。」


「だーから、扇風機買いにきただけだっつってんだろーが。」


「奴らにアレを渡す位なら、アンタの方がマシだ。」


「オイ、聞いてる?
扇風機買いにきただけなんだって。」


女は銀時に地図を渡す。


『何、コレ?』


「【せんぷうき】は、その場所に封印してある。
その場所にいって、【せんぷうき】を破壊してきてほしい。」


「買いにきたって言ってる奴に、破壊の申し出!?」


「アレは、人心をまどわす悪魔の機械[からくり]だよ。
人が手を出していい代物じゃないんだ。」


「どーいう意味だ?
あの、アレか。
手ェ入れたら、ガガガってひっかかるアレか?
痛てーよな、アレ。
一回はやるよな、アレ。」


『思い出しただけでも、痛くなってくる。』


「私の父は、江戸でも有数のからくり技師だったのさ。
その腕に目をつけた奴らは、父にあんなものを……。

でも、あんなものでも、父がつくった最後の機械…。
連中から【せんぷうき】を、とり返しておきながら。
今まで破壊できなかったのは、全て私の弱さゆえ。
アレを奴らに渡したら、もうおしまいだわ。
お願い、【せんぷうき】を。」


「あっ、いたぞ!!」


ショッカーもどきの一人が、仲間を呼ぶ。


「早く、行って!」


「しかし…。」


『お姉さんは…。』


「江戸を…地球を救って!!」
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