空色スパイラル2

□第七十訓 ギャンブルのない人生なんて、わさび抜きの寿司みてぇなもんだ。
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『だから…ほどほどにって言ったんすよ。』


愛は、博打をしに行った銀時とマダオを、賭場のバーでココアを飲みながら待っていた。
ちなみに、お金はさっきトランプゲームで勝った金だ。

しばらくすると、銀時とマダオが歩いてくる。
しかし、その姿パンツ一丁だったのだ。。


「いやぁ〜。冬じゃなくて、良かったな。
凍えるところだったぜ。」


「そーだな。
財布の方は、一足早く冬を迎えちまったがな。」


「いやぁ〜。
ホントついてるぜ。」


「そーだな、ついてるな。
貧乏神的なモノが、絶対憑いてるな。」


『泣きたくなってきた。』


「そーいや。
最近、左肩が重いんだよね、意味もなく。
なんか乗ってるカンジなんだよね。
貧乏神的なモノが。」


「気にしすぎなんだよ。
陰気なツラしてたら、ツキも逃げちまうぜ。

俺もよォ、最近なんかデケー鎌もった、不気味なオッさんが、視界にちらつくんだけど。
もう気にしないことにしたよ。」


『グラサンに黒スーツの、いかついオッさんとかね。』


「それは気にした方が、いいと思う!!」


「ホラ、言ってるそばから。
アンタの後ろに…。」


マダオの後ろには、真っ黒なマントを羽織ったオッさんがいた。


「ギャアアアアアアア!!
悪霊退散!妖魔降伏!
えろいむえっさいむ!てくまくまやこん!
ぬお!!」


オッさんは何かを投げつけてくる。


「…ついてるだ、ついてねーだ。
アンタら、それでも博打打ちかィ?」


「こいつァ、俺達がひっぺがされた着物。
あんた…。」


「ババアの炊き出しじゃねーんだ。
待ってるだけじゃ、ツキは回ってこねーよ。
ギャンブルの女神は、自分〔てめー〕で口説きおとさなきゃあよ。」






オッさんの前に、沢山のコインが積まれる。


「おおおおおおお!!
スゲーよ、あの男!!
さっきから勝ちまくってるぞ!!何者だ!?」


「オイ、アレ。あの顔の傷…。
もしかして、ツキヨミの勘兵衛。」


「ツキヨミ?」


「恐るべき強運をもつ、伝説の博徒。
奴はその名の通り、ツキの流れを読めるって話だ。
どんな劣勢も自分の流れに変えてしまう、ギャンブラー達のカリスマよう。

確か、しばらく江戸から姿消してたはずだが。
まさか、この目でおがめるたァ。」


マダオはしみじみと言う。


「…伝説の博徒だか、なんだかしらんが。
ギャンブルの女神が、こんな尻軽だったとはよ。
俺があんなに必死に口説いても、見向きもしなかったのに。」


「妻帯者には、興味ねーんだろ。」


「ハツなんて実家に帰ったきり、全然帰ってこねーよ。
一夜の過ちぐらい、犯してくれてもいいだろ。」


「ああいうワイルドなカンジが好きなのかね?女神様は。」


「ああそーだ、きっとそーだ。
ワイルドでいってみよう。」


『ちょっ…!二人とも、どこ…。』


「「リベンジ!」」


しばらくして、帰ってきた二人はパンツ一丁に戻っている。


「…なんだ、何が悪いんだ。
ワイルドさが足りねーのか。
なんかもっと、
〈俺なんて、どーでもいいんだ。〉
みたいなカンジ、出ねーかな。
長谷川さん、パンツ脱げ。」


「オイオイ、いいけど。
あんまワイルドじゃねーぞ、俺のは。
どっちかっつーと、マイルドだ。」


『ダメだ…こりゃ。』


すると、例の勘兵衛がやってくる。


「アンタら、何してんだァァ!!
人がせっかく着物とりかえしてやったのに、バカかァァァ!!

もう帰れェ!!
お前ら、博打向いてねーんだよ。」


「アンタが勝手にやったことだろう、頼んだ覚えはねぇ。」


「それともアレか。
ワイルドさに垣間見える、その優しさが。女神をおとすコツなのか。
大層なもんだな、コノヤロー。健康に気をつけてよ。」


「無理矢理、優しさ垣間見せてんじゃねーよ!!」


『本当に、ごめんなさい。』
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