空色スパイラル2

□第六十五訓 外見だけで人を判断しちゃダメ
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「おー、栗子。」


遊園地の入り口で待つ一人の少女に、チャラチャラした男が近づく。


「ワリィ、ワリィ。遅れちまって。
待ったァ?」


「いえ。私も、今来たところでございまする。
全然、待ってませんでございまする。」


「あ、なんだよ。
よかった〜、実は電車がさァ〜………。」


そのカップルを監視する五つの影。


「…野郎、ふざけやがって。
栗子はなァ、てめーが来るのを、一時間も待ってたんだよ。バカヤロー。」


そう言って、破壊神【松平片栗虎】はライフルを構える。


「どーしてくれんだ。
俺が手塩にかけて育てた娘の人生を、一時間も無駄にしてくれやがって。
残りの人生、全てで償ってもらおう。

オイ、トシ!
お前、ちょっと土台になれ。」


「待たんかィィィ!!」


後ろに控えていた土方は、突っ込む。


「お前、何ィィィィ!?
奴って、アレかァァ!?娘の彼氏ィ!?」


「彼氏じゃねェェ!
認めねーよ、あんなチャラ男。
パパは絶対認めねーよ!」


「やかましーわ!
俺はお前を警察庁長官なんて、絶対認めねーよ!」


「土方さん。
俺もアンタが真選組副長なんて、絶対認めねーよ!」


「おめーはだまってろ!!
ってか、なんで愛までいるんだ?」


「俺が読んだんでさァ。」


『呼ばれちゃいましたぁ。』


愛は、満面の笑みを土方に返す。


『総悟が、タダで遊園地に連れてってくれるって、言ったから。』


「愛ちゃんみたいな可愛い子なら、万々歳だよな。トシ。」


「なんで俺に振る…。」


土方は呆れ顔で背を向ける。


「冗談じゃねェ。
こっちは、仕事休んでまで、来てやったってのに。
娘のデート、邪魔するだァ?
やってられねェ。帰る。」


「オイ、待て。
俺がいつ、そんな事頼んだ。
俺はただ、あの男を抹殺してほしいだけだ。」


「もっとできるか。」


「あんなチャラ男が、栗子を幸せにできると思うか?
いや、俺だってなァ。
娘の好きになった奴は、認めてやりてーよ。
悩んで…色々、考えた…。

それで…抹殺しかねーなっていう結論に…。」


「色々考えすぎだろ!
マフィアか、お前は!」


松平はライフルを構え直す。


「警察なんて、ほとんどマフィアみたいなモンだよ。」


「長官が、とんでもねー事言ったよ。」


「それになァ。
娘のためなら、仏にもマフィアにも、なるのが父親ってもんよ。」


土方は近藤に助けを求める。


「近藤さんよォ。
この親バカに、なんとか言ってやってくれ。」


「誰が近藤だ。
殺し屋【ゴリラ13】と呼べ。」


近藤は、サングラスを掛け、ライフルを構える。


「何やってんの、アンタ…。
13ってなんだよ?」


「不吉の象徴。
今年に入って、13回女に振られた。

オイ、とっつァん。
俺も手伝うぜ。
栗子ちゃんは、小さい頃から見知って、俺も妹のように思ってる。
あんな男にやれん。」


近藤は松平の隣に腰かける。


「俺は、男のくせにチャラチャラ着飾った、軟弱者が大嫌いなんだ。
栗子ちゃんは、俺みたいな質実剛健な男が、似合ってる気がする。」


「いや、お前みたいな奴はいやだ。」


「栗子ちゃんは、俺みたいな豪放磊落な男が、似合ってる気がする。」


「いや、お前みたいな奴はいやだ。」


「いくぞ、とっつぁん!!」


「おっ…おい!!」


土方の制止の声も届かず、松平と近藤は遊園地に駆け込んでいく。


「やべーな。
アイツら、ホントにやりかねねーぞ。
総悟、愛。止めにいくぞ。」


「誰が、総悟でィ。
俺は殺し屋【ソウゴ13】。」


沖田も同様に、サングラスにライフルを構え、後に続いていく。


「おいいィィィ!!」


「面白そうだからいってきやーす。」


土方はため息を吐く。


「愛…。」


『私は愛じゃ…。』


「てめぇまで、バカはしねーよなぁ?」


『は…はい。』


愛と土方も、急いで後に続いていった。
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