空色スパイラル2

□第六十四訓 キャラクターはシルエットだけで読者に見分けがつくように描き分けよう
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愛、新八、マダオは【スナックお登勢】にいた。


「そーかィ。
あのチャイナ娘、ホントに星に帰っちまったのか。」


「…ええ。
僕と愛さんが止めたんだけど。
…銀さんが、やっぱり親の元にいるのが、一番いいって。」


「そーさな。
あんな根なし草の所にいるよりは、マシだわな。」


「フン。
うるさいガキだったけど。
いなくなったら、いなくなったで、さびしいものがあるね。」


『はぁー。
神楽のいない万事屋なんて、万事屋じゃないっすよ。
定春の世話、誰がするんすか…。』


すると、廁から銀時が出てくる。


「あー。
なんで、こんな事になっちまったかな。」


銀時は頭に手を当てる。


『どうしたんすか?』


「やべーよ、オイ。
やっぱ、あきらかに腫れてるみたいなんだけど。
大事なとこが。」


「え〜。
汚い手で、さわったんじゃないスか。アンタ。」


「病気か?
誰かにうつされたか、オイ。」


「お前と一緒にするな。
危ない橋は、俺は渡らねー。」


『なんか、大変そうっすね…。』


銀時はカウンターに座る。


「気のせいじゃないスか?
元々、そういう大きさだったとか。」


「違ーよ。
アイツは、もっとこう謙虚な奴だったよ。」


「どっかで、ミミズに小便でも、ひっかけてきたんじゃないのかィ?
腫れるっていうよね。」


「何、言っちゃってんの。
迷信だろ、そんな…。」


しかし、銀時は心当たりにハッとする。


「アンタ…まさか。」


「いやいや、ミミズじゃねーよ。
…ミミズっぽい、えいりあんに…。」


「エイリアンニ、小便カケタンデスカ?
ア〜ア。モウ、ダメダソリャ。

私ノ友達、ソレヤッテ。今ハ、星ニナリマシタ。」


「え?星になっちゃったの。
何それ?どーなるの、俺?
俺っていうか、もう一人の俺。」


すると、戸が開く。
入ってきたのは、お妙だった。


「こんばんは〜。」


しかも、お妙は図ったようにチャイナ服を着ている。


「姉上。
なんですか、その格好?」


「ああ。今、私の店。
チャイナ娘強化月間で、みんなチャイナ娘着て、仕事してるのよ。」


「チャイナ娘強化月間って、なんですか?
何が強化されるんですか?」


「男の妄想よ。」


お妙は銀時に話しかける。


「どーかしら、銀さん。」


「あー。
今、何話しても無駄。理由はきくな。」


「まァ、そんなに神楽ちゃんのこと…。
御免なさい、思い出させるような事して。

神楽ちゃんがいなくなったって、きいたものだから。
みんな、さびしがってると思って、今日はコレ持ってきたんです。」


お妙は持っていた包みから、酒ビンを取り出す。


「こーゆう時は、コレ。
飲んで忘れましょ。」


「うおっ、コレ高い酒だよ。
どーしたの?」


「お店からパク…もらってきたんです〜。」


お妙は銀時に酒を注ぐ。


「忘れることで、前に進めることだってあるでしょ。
嫌なことは、アルコールと一緒に流しましょう。
ねっ、銀さん。」


「いや、無理だろ。コレ。
だって常に俺の股に、ぶらさがってるわけだからね。」


「まァ、アイツだったら、元気にやってくさ。
生きてりゃ、また会えるよ。」


キャサリンが煙草を吹かす。


「私的ニハ、イナクナッテ清々シテマース。
前カラ、私トキャラガ、カブッテル思ッテマシタ。

カワイラシイ外人キャラ、ミタイナ。」


「いや、お前。かわいくねーから。」


お妙はカウンターに座り、ポツリと呟く。


「私は、やっぱりさみしい。
なんだか、いつの間にか妹みたいに思ってたから。
私ね、昔から妹がほしくて。

新ちゃんが小さい頃。
無理矢理女の子の格好させて、よく父上に怒られたものだわ。
ねっ?新ちゃん。」


しかし、新八はカラオケで熱唱中だ。


「…なのに、どうして先に逝ってしまったの、父上様ァァ!!」


銀時はマダオに聞く。


「俺的には、この辺で評判の泌尿器科とかない?」


「アレ…三丁目のタバコ屋の前の病院。
あそこの泌尿器科、美人女医がやってるらしいよ。」


「マジでか、腫れが悪化するぞ。オイ。」


キャサリンが口を開く。


「大体、今時。
口癖が【アル】のチャイナ娘なんて、古ーんだよ!

あれ絶対、キャラつくってるぜ〜。
絶対、標準語ペラペラだよ〜!」


「オイ、カタカナでカタコトしゃべるの、忘れてるぞ。」


「あっ、ヤベッ!!」


「ちょっと!キャサリンさん。
あなた、さっきからきいてれば、いい加減にしなさいよ!
死んだ人のことを、悪く言うなんて最低よ!

私に言わせりゃね。
アナタの全文カタカナも、古いのよ!!
読み難いし、打ち難いのよ!!
ねっ、新ちゃん!」


「お前の母ちゃん、何人だあああっ!!」


「女医って、どんなカンジだろう。
いっちゃおーかな〜。
どうしようかな〜。」


すると、お登勢が話を切りだした。


「とにもかくにもさァ。
アンタら、これからどーするつもりなのさ。
野郎二人と愛で、万事屋やってくつもりなのかィ?」


「あん?
別に何人だろーと、やれねーことはねーだろ。
元は、俺と愛でやってたんだから。」


「いやいや、そーゆんじゃなくて。
実はさァ、前に万事屋に入りたいって奴が、ウチに来て。

私を経営者と間違ったかしらんが、履歴書と写真、おいてったんだよ。」


渡された履歴書を開く。


「…履歴書っていうか。
お見合い写真じゃねーの、コレ?」


「アラ、キレイな女性。
【猿飛あやめ】。
経歴がスゴイわ。
お庭番衆を辞した後、殺し屋に転職ですって。」


「殺し屋?ん。」


その時、銀時の後ろで誰かが逆さに降ってくる。


「うぉああああ!!
くせ者!くせ者だァ!!
何奴じゃ貴様!!」


「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色…ヒロイン交代の理をあらはす。

こんばんは、万事屋さっちゃんです。」


さっちゃんはキレイに着地する。


「ムサい野郎と天然っ子だけで商売やってける程、世の中甘いものじゃないわ。
アダムにイブ、社長に美人秘書、林家ぺーにパー子がよりそうように。
何をするにも、ヒロインという存在は必要不可欠なのよ。

かといって、アルアル中華娘は、もう古いし。
猫耳年増女なんて、問題外。
ババアにいたっては、男だか女だか、わからない始末。」


さっちゃんはメガネを押さえる。


「わかる?
これからは、コレよ。
これからは、メガネっ娘くの一…アレ?
くの一メガネ…ん?
メガくの一。あっ、これでいこう。

91メガの時代なのよ!!あっ、間違った。」


さっちゃんは銀時に向き直る。


「そうゆうことだから、あの…銀さん。
私を、あのお嫁さんに…じゃねーや。

万事屋に入れてく…。」


「眼鏡は新八とかぶるから、ダメだ。

チームは集団だからこそ、個性が必要なんだよ。
個性を出す、一番いい方法は。
コレ、ぶっちゃけ見た目なんだよね。
それが、かぶってるなんて、言語道断でしょ。

例えば、そうだね。
モヒカンにするとか、デカイ武器をもってるとか。
シルエットだけで違いがわかるようにして、もう一回来てみて。」


銀時のダメ出しに、さっちゃんはメガネを片手で砕く。

視力を失ったさっちゃんは、マダオに話しかける。


「これなら文句ないでしょ。
これで、気がすんだ?
そうやって私をなぶって、楽しんでるんだろうけど、私Mだから。
私も楽しんでるから。

私はMで、あなたはSで。
他にはもう、何もいらないじゃない。」


「悪ィな。
どっちかっつーと、俺もMだ。」
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