空色スパイラル2

□第五十五訓 メニューが多いラーメン屋はたいてい流行っていない
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愛は久しぶりに、友人のやっているラーメン屋【北斗心軒】に顔を出しに来た。


『幾まっちゃん、いる?』


愛が戸を開き、中に入ると。


「いらっしゃい!」


「いらっしゃ…。」


『こ…小太郎!?』


バーテン服を着た桂がいた。


「なんだい?愛。
もしかして、そいつの知り合いか?」


『幾まっちゃん、いつの間にこんなバイト雇ったんすか?』


「愛、こんなとは何だ!?」


「ラーメンの修行中なんだと。
こんななのに。」


「幾松殿までっ!」


愛はカウンターの前に立つ。


『言ってくれたら、手伝うくらいしたのに!』


「愛は万事屋が忙しいだろ。」


『どうせ、銀時とゴロゴロしてるだけだもん。
暇っすよ、すーっごく!』


愛はふと思い出す。


『ごめん。ちょっと小太郎、借りる!』


「オッ、オイ。
愛、何っ…!」


愛は桂の襟首を掴み、外に連れ出す。
路地裏に入ると、桂に言った。


『小太郎、何でいるんすか!』


「何かあったか?」


『何かあったか、じゃないっすよ。
幾まっちゃんの旦那さんは…!!』


「知ってるよ。」


『え?』


桂は下を向いている。


「幾松殿から聞いた。
旦那を殺した攘夷志士が嫌いだと。」


『………小太郎は分かる奴だって知ってるから、大丈夫だと思うけど。』


「分かってる、幾松殿を悲しませるような事はしない。」


愛は背を向ける。


『幾まっちゃんが待ってる。
帰ろっか!』


「うむ。」






愛と桂は店に入る。


「…幾松殿、ちと話があるのだが。」


『あれ?』


店の中には誰もいなかった。


「どこに、いったんだ…。」


桂はカウンターの上に一枚の紙を見つける。


《出前にいってくる。
店番、頼むわ。》


「信用しすぎじゃないのか…。」


『幾まっちゃんは、そういう人だから。』


「…………やはり、ここにはいられぬ。
幾松殿を、これ以上傷つけるわけにはいかぬ。
何より、俺の心が迷う。」


『……それは勝手なんすけど。
ちょっと問題発生かも…。』


愛は店の外を見ながら言う。


「どうし…!!
なぜ、出前用のバイクが…?」


『小太郎!
とりあえず、心当たりを当たるよ!!』


愛はバイクに跨った。






『小太郎!』


「うむ!」


二人はバイクを飛ばす。


「桂ァァァァァ!?…と、愛さん?
なんでェェ!?」


真選組の隊員は驚く。


「桂ァァ!?
まさかアイツ、桂って…。
あの桂小太郎!?」


「本物の攘夷志士!狂乱の貴公子、桂小太郎かァァ!?
ヤバイ、駕籠なんて、ほっといて逃げろ!」


幾松を攫った男二人は、逃げようとする。


「愛、頼んだ。」


『おうよっ!』


愛は桂に変わり、バイクのハンドルを握る。


「お客様〜、デザートの方。
お持ちしましたァァ!!」


桂は持っていたチャーハンを、男二人に叩きつける。
そして、桂はそのまま着地し、愛はバイクにブレーキをかけて止める。


「二つだけ、言っておく。
一つ、二度と攘夷志士を語らぬこと。
二つ、二度と【北斗心軒】の、のれんをくぐらぬこと。

この禁、犯した時は。
この桂小太郎が、必ず天誅を下す。」


『小太郎が怒ってるの、久しぶりに見た…。』


幾松を桂に任し、愛は沖田の所に行く。


『やあ、総悟。』


「どうして、愛が桂といるんでィ?」


『友人が攫われたの助けるのに、彼が協力してくれたんすよ。』


「そういう事にしておきまさァ。
でも、愛。
今回は俺だったから良かったけど。
土方さんなら、こうはいきませんぜ。」


『だろうね。
まっ、ありがとう!』


愛は沖田の肩を叩くと、その場を去っていった。






数日後。


「いらっしゃ…。
アラ、銀さん。愛。
久しぶり。
愛とはこの間、会ったけど。」


『幾まっちゃん、元気そうで何よりっすよ。』


「で、今日はどうしたの?」


「ん、オオ。
久しぶりに金が入ってな。」


『私のリクエストで、ここにしたんすよ。』


「ありがとね、愛。」


銀時と愛はカウンターに座る。


「さーて、何食うか…ん?

そば、なんてメニューにあったっけ?」


「食べてみる?」


『うん!』


幾松と愛は微笑み合う。
銀時はキョトンとした表情で、それを見ていた。


第五十五訓 メニューの多いラーメン屋はたいてい流行っていない
 

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