空色スパイラル2

□第五十四訓 人の名前とか間違えるの失礼だ
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数日前に、辰馬によって破壊された万事屋。
銀時達は修理に来ていた。


「うがァァァァ!!」


神楽が叫んでいる。
また、指を金づちで打ってしまったらしい。


「ねぇ。銀さん、愛さん。」


「あ?」


『どうしたんすか?』


「僕ら、万事屋なおしに来たんですよね?
指と家を破壊する音ばかり、聞こえてくるんですけど。」


「創造と破壊は表裏一体だよ。新八君。」


「いつまでたっても、創造が始まらないんですけど。」


新八は諦め顔で言う。


「やっぱ、無理だ。
素人が大工なんて、できるわけない。」


「バカヤロー、お前。
最近の大工なんて、欠陥住宅とかつくって、ロクなもんじゃねーよ。」


「欠陥人間がつくるよりマシだ。バカヤロー。」


『新八。ダメっすよ、諦めちゃ!
途中で諦めたら、何も進まない!!』


「それ以前に、進むどころか後退してるんですけど。」


「仕方ねーだろ。
大工雇うにも、金がねーんだよ。

大体、テメーらも万事屋のはしくれなら、これぐらい器用にこなせ。
バカヤ…。」


すると、銀時の足から血が吹き出す。


「うがァァァァ!!」


『あっ、確か絆創膏が!!』


「ダメだ、こりゃ。」


新八が完全に諦めた時、背後で声がする。


「ぴんぽーん。」


そこには、宅配のオジさんがいた。


「ぴんぽーん、ぴんぽーん。
すいません、お届け物です。」


大きな箱を受け取ると、横に手紙が付いていた。


《金時君、愛ちゃん。
長らく、連絡をとっていませんでしたが、いかがお過ごしでしょうか。
僕の方は相変わらず、宇宙を縦横無尽に飛び回っております。
やっぱり、宇宙はいいです。
先日、地球に寄ることがあったので、金時君達に会いにいったのですが。
すれ違いになり、残念です。

実は、今回筆をとったのは、君に言いたい事があったからです。
昔、君達は。

〈オイ、茨木[いばらぎ]。
また、キャバクラいったらしいな。
今度、俺もつれてけ。〉

〈銀時!茨木[いばらぎ]君!
んな話するなら、皿運ぶの手伝って!〉

と言っていましたが、彼は茨木[いばらぎ]じゃなく、茨木[いばらき]君です。

今さらと思いましたが、やっぱり人の名前とか間違えるのは、失礼だと思います。
それじゃ、元気で。
金時君、愛ちゃん。

坂本辰馬。


P.S.家壊してゴメンネ。
(このP.S.って、手紙書くと使いたくなるね(笑))》


銀時は読み終わると同時に、手紙を八つ裂きにする。


「笑えるかァァァァァ(怒)
本文とP.S.が逆、コレェェ!!

人の家、壊しといて。
P.S.ですませやがったよ。
自分[てめー]も人の名前、間違えてるしよォォ!
よしんば、P.S.が世界平和を願う意味だとしても、許せねーよ。
コレは!」


『まあまあ、辰馬だもん。
仕方ないって…。』


「類は友を呼ぶアル。」


「友達じゃねーよ、こんなん!
死んでくんねーかな。
頼むから、死んでくんねーかな。
スゴク苦しい死に方、してほしい。」


「おちついてくださいよ、銀さん。
手紙は、あくまでオマケですよ。
坂本さん、これを送りたかったんでしょ。」


「何アルか、この荷物?」


「きっと、こっちにお詫びの品とか入ってんですよ。」


銀時は愛に尋ねる。


「…愛、そーいや。
アイツって、確かボンボンだったな。」


『えっ?あー、そういえば。』


愛以外の考えが一致する。


「んだよ、それならそーと早く言えっつーの、おちゃめさん!
もう、ホントッ。
あいつったら、俺に勝るおちゃめっぷりだな。ホントッ。」


銀時がガムテープを剥がし、中を除くと煙と小さい人が二人、入っていた。


「どーも」


「この度は、デリバ…。」


銀時は勢いよく、箱を閉める。


「あー、コレ夢だな。オイ。
支離滅裂だもん、ありえねーもん。」


「ちっちゃいオッさん、入ってたヨ。
ちっちゃいオッさんが、しきつめられていたネ。」


『まさか、あの見ると幸せになれると言われる、ちっちゃいオジさんかも…。』


「いやいや、今のは人形でしょ?
人形ですよ。
もっかい見てみましょうよ。」


「夢だって!
いい加減、目を覚ませよ。俺。」


開くと、青筋を浮かべたオジさんが二人、また入っている。


「どーも。」


「この度は、デリバ…。」


銀時が勢いよく、蹴り飛ばす。


「ウソウソ。夢だ、夢。」


「ちっちゃいオッさんの悪夢に、さいなまれてるんですよ。僕ら。」


「じゃあ、解散…。
目ェ覚ましたら、もっかいミーティングな。」


『「うース。」』


「待たんかィィィ!!」


踵を返す銀時達に、オッさん達は叫ぶ。


「てめーら、人の話を最後まできけェェ。バカヤロォォ!!」


「この度は、お前。
デリバリー大工をご利用頂き、ありがとございますって言ってんだよ。
コノヤロォ!!」


「デリバリー大工?
しらねーよ、そんなもん。
この度は、そんなもんしらねーから、帰れ。」


「なんだァァ、その言い草はァァ!!」


「遠い星から、わざわざ家直しに来てやったんだぞ!!」


新八が尋ねる。


「もしかして、アナタ達。
坂本サンに頼まれて。」


「そうだよ!
俺たちは依頼があれば、星をもまたいで家を建てに行く。
ウンケイ!そして。」


「カイケイ!
デリバリー大工なんだよ!!」


「チェンジで。」


「いや、そんなんないから。」


「テメーら、そんなナリで何ができるってんだよ。
どーせ、シルバニアファミリーの家しかつくれねー、シルバニア大工なんだろ。」


「殴るぞ、お前。」


オッさんは自信満々に言う。


「聞いて驚くなよ、俺たちはなァ。
江戸を国際都市へと変えた、文明開化の象徴。
あの天高くそびえるターミナルの…。」


『すごいっすねー。』


「だから、最後まできけェ!
ってか、棒読み!?ちっともスゴいと思ってねーだろ。
とりあえず。
……ターミナルの中にある給湯室の、おたまとかひっかけるアレ…アレつくったんだぞ。」


「戸を閉めても、おたまとかガシャンと、おちねーんだぞ、コルァ!!」


「甘ェーよ。
俺なんか、牛乳パックで本棚つくったぞ。コルァ。」


『私の部屋のCDラックは、100%ダンボール使用じゃ!』


「地球に優しいぞ、コルァ。」


「なんだと、それ位の優しさで、地球が救えると思ってるのか?」


「地球っていうか、金がねーんだよ。」


『温暖化どころか、氷河期なんだよ!』


「家計は厳しいんだヨ!」


「アンタら、何の話ししてんのォォ!?

銀さん、愛さん。
どうせ、これ以上悪くなることなんて、ないんですから。
やってもらいましょうよ。
お金の方は、坂本さんが払ってくれたみたいだし。」


銀時は金づちを手に取る。


「こんな言葉を、しってるか?
茂吉っていう、偉い大工が言った言葉でよォ。
ろくにしゃべる職人に、ロクな奴はいねーって。」


銀時は金づちをオッさんに投げる。


「口で語る術をしらねェ奴を、職人という。
ゆえに、職人は腕で語る。

おめーらは、どっちのクチだ。」


銀時は挑発的に笑った。
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