空色スパイラル2

□煉獄関編
2ページ/5ページ



目の前でお通が戦っている。



「お通ちゃァァァん、いけェェェェェ!!」



親衛隊の皆さんと、我らがツッコミ新八君は必死で応援中だ。



「いやいや、いけーじゃねーよ。
止まった方がいいよ、彼女…。
変な方向にいっちゃってるよ。」



「お通ちゃんは歌って戦うアイドルに転向したんです!」



「人間、そーゆーこと言いだしたら、危ねーんだよ。

俺のなじみだったラーメン屋も。
“今度カレーもメニューに出してみる”って言った直後、つぶれたよ。」



『ここの管理人、ヤバイっすよ。
今、NARUTOの連載も始めようと画策してるんすよ。
私達、終わるかも…。』



「なんちゅー、例え話ですか!
お通ちゃんも管理人も大丈夫です。
お通ちゃんは歌い、管理人は書き続けます。」



銀時は愛と神楽に顔を向ける。



「…なーんか、あの娘は不幸になりそーな顔、してるもんな〜。
俺、前から思ってたんだよ。

その点、愛は俺が幸せにするし。
神楽。お前は終生、ちゃらんぽらんの相が出てるよ。
よかったな。」



しかし、神楽は忽然と消えていた。



リングの上に目を戻すと、神楽がお通の前に立っていた。

視界に入った瞬間、銀時は愛の肩を抱き、新八と共に出口に向かう。



『ちょっ…今から神楽が…!?』



「…ヤバイよ。
俺しらない、俺しらないよ。」



「僕もしらないよ、アンタのしつけが悪いから、あんなんなるんでしょーが。」



「何、言ってんの?
子供の生活は三歳までに決まるらしーよ。」



その時、横から知った声が聞こえる。



「何やってんだァァ。
ひっこめェェ、チャイナ娘ェ。
目ェつぶせ、目ェつぶせ!

春菜ァァ!何やってんだァ。
何のために主婦やめたんだ、刺激が欲しかったんじゃないの!?」



その声の主と目が合う。



『やっ!総悟。』



「やァ、愛。」








神社の鳥居の前に座る。



「いやー、奇遇ですねィ。
今日はオフで、やることもねーし。
大好きな格闘技を見に来てたんでさァ。
しかし、旦那方も格闘技がお好きだったとは…。

俺ァ、とくに女子格闘技が好きでしてねィ。
女どもが、みにくい表情でつかみ合ってるトコなんて爆笑もんでさァ。」



「なんちゅー、サディスティックな楽しみ方してんの!?」



愛は沖田に目を合わせる。



『総悟、言い過ぎ。』



「すいやせん、つい。」



「愛の言う通りネ。
一生懸命やってる人を笑うなんて最低アル。
勝負の邪魔するよーな奴は、格闘技を見る資格ないネ。」



「明らかに試合の邪魔してた奴が、言うんじゃねーよ。」



沖田が振り返り、四人に尋ねる。



「それより旦那方、暇ならちょいと、付き合いませんか?
もっと面白い見せ物が見れるトコが、あるんですがねィ。」



「面白い見せ物?」



『何すか?』



「まァ。付いてくらァ、わかりまさァ。」








沖田は地下の、治安の悪そうな場所に案内する。



「オイオイ、どこだよココ?
悪の組織のアジトじゃねェのか?」



「アジトじゃねェよ、旦那。
裏世界の住人たちの社交場でさァ。

ここでは、表の連中は決して目にすることができねェ。
面白ェ、見せ物が行われてんでさァ。」



視界が開くと、そこは闘技場だった。



「こいつァ…地下闘技場?」



「煉獄関…。

ここで行われているのは。」



中央で二人の男が向かい合う。



「正真正銘の殺し合いでさァ。」



鬼の面を着けた男が、すれ違い様に相手を斬った。



「勝者、鬼道丸!!」



「こんな事が…。」



「賭け試合か…。」



愛が飛び出そうとするのを銀時と沖田が止める。



『っ!?
……わかったっすよ、我慢しろでしょ。』



「こんな時代だ。
侍は稼ぎ口を探すのも容易じゃねェ。
命知らずの浪人どもが、金ほしさに斬り合いを演じるわけでさァ。

真剣での斬り合いなんざ、そう拝めるもんじゃねェ。
そこに賭けまで絡むときちゃあ。
そりゃ、みんな飛びつきますぜ。」



「趣味のいい見せ物だな、オイ。」



神楽は沖田の胸ぐらを掴む。



「胸クソ悪いモン、見せやがって。
寝れなくなったら、どーするつもりだ、コノヤロー。」



「明らかに違法じゃないですか、沖田さん。
アンタ、そんでも役人ですか?」



「役人だからこそ、手が出せねェ。
ここで動く金は莫大だ。
残念ながら、人間の欲ってのは、権力の大きさに比例するもんでさァ。



「幕府も絡んでるっていうのかよ。」



『まったくもって、サイテーっすね。』



「ヘタに動けば、真選組も潰されかねないんでね。
これだから組織ってのは、面倒でいけねェ。
自由なアンタがうらやましーや。」



銀時は鬼道丸を見据える。



「…………言っとくがな。
俺ァ、てめーらのために働くなんざ、御免だぜ。」



「おかしーな。
愛はともかく、アンタは俺と同種だと思ってやしたぜ。
こういうモンは、虫酸が走るほど嫌いなタチだと…。

アレを見て下せェ。
煉獄関、最強の闘士【鬼道丸】…。
今まで何人もの挑戦者を、あの金棒で潰してきた、無敵の帝王でさァ。
まずは奴をさぐりァ、何か出てくるかもしれませんぜ。」



銀時は青筋を浮かべる。



「オイ。」



「心配いりませんよ。
こいつァ、俺の個人的な頼みで、真選組は関わっちゃいねー。
ここの所在は俺しか知らねーんでさァ。

だから、どーかこのことは、近藤さんや土方さんには内密に…。」



沖田はいたずらっ子の様な笑みを浮かべる。



『総悟、ありがとっ!』



「愛さん、待って!」



「愛、私も行くネ。」



残された銀時は沖田に低い声音で言う。



「テメー。愛を使って、俺がやらざる得ない様に仕組んだだろ。」



「やっぱり、バレてましたかィ?
旦那が確実に動くのは、愛関連のみ…。」



沖田の顔の真横に、銀時の拳が落ちる。



「次、アイツをダシに使ったら、テメーでも容赦しねー。」



銀時の後ろ姿を見て、沖田は切実に思う。



「こりゃ、あの過保護がいる限り、愛は奪えそうにないなァ。」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ