空色スパイラル2

□第四十一訓 そんなに松茸って美味しいもんなのか一度よく考えてみよう
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銀時、新八、愛の三人は、森の中で怪しげなキノコを見ていた。



「いやいやいやいや。
これは無理ですよ。
どう見ても毒キノコですもん。」



「何度も同じことを言わせるな。
グロいもの程、食ったらウメーんだよ。
塩辛然り、かにみそ然り。」



「この奇怪な色は警戒色ですよ。
“俺は毒もってるぜ、近よるな”っていう。」



「そーゆー尖ったロンリーウルフに限って、根は優しかったりするんだよ。」



愛は提案する。



『定春に嗅がしたら?』



「どーだ、定春?

クゥ〜、いい香りだ。
これは松茸に優る極上品だぜ。
さすが銀さんだ。(裏声)」



「何、勝手に訳してんの。
明らかに拒絶してるでしょ。」



「メガネ。うるせーよ、銀さんに逆らうな。
どーせ、椎茸しか食ったことねーんだろ?(裏声)」



「アンタもどーせ、なめこ汁が限界だろ。
貧乏侍よ〜(裏声)」



『じゃあ、間を取って観賞用で…。』



すると、遠くから神楽の声がする。



「コレ、スゴイの見つけたよ。
コレも食べれるアルか?」



神楽が背に負っていたのは、頭に大きなキノコを生やした熊だった。



『わぁー、美味しそう!』



「ってか、どっ…どっから拾ってきたんだ、そんなモン。
こっち来んなァァ!!」



「そのまま故郷に帰れ!
そのまま所帯をもて!
そのまま幸せになれ!」



「アラアラ。三人とも、はしゃいじゃって。
大丈夫ですよ、みんなで平等にわけましょーね。」



「いらねーよ、そんなの。
喜ぶのは愛さんだけだし。

…ってゆーか、何それ?
しっ…死んでるの?それ。」



神楽は熊を地面に落とす。



「わかんない、何かむこうに落ちてたアル。」



「お前、なんでも拾ってくんの、やめろって言ったろ。」



「…コレ、熊ですよね。
頭にキノコ、生えてますよ。」



「アレだろ。あんまり頭、使わなかったから…。
三丁目の岸部さんっているじゃん。
あそこのジーさんにも生えてた。」



「マジアルか、気をつけよ。」



『あわわわわ!!
どうしよう、キノコが頭からニョキって…。』



「愛さん、もうツッコミませんから。」



愛と神楽は熊を枝でつつき始めた。
新八はそれを見ながら言う。



「猟師にやられたのか…。
どのみち、そんなに長居できませんね。
わざわざ、こんな遠いトコまで、キノコ狩りに来たのに…。」



「バカヤロー、怖気づいてんじゃねーぞ。
まだ、松茸の一本も手に入れてねーんだぞ。
虎穴に入らずんば、虎児を得ずだ。

熊が恐くて、キノコ狩りができるか、コンチキショー。」



「コンチキショー。」



『コンチクショー』



銀時と愛、神楽は森の奥に足を進める。
松茸の歌を歌いながら。

すると、後ろで新八が叫んだ。



「銀さん。うえ、うえ!」



目の前には巨大な熊が…。
しかも、また頭にキノコが生えている。



「「ぐふっ。」」



銀時と神楽は死んだフリをする。

それに対し、愛は熊を睨みながら、後ろに後退する。



「イカン、イカン。
死んだフリはいかんよ!
迷信だから、迷信だから。それ!
愛さんのが正しいの!!」



神楽は銀時に言う。



「…銀ちゃん、迷信だって…。」



「…………。」



「あっ、ズルイよ!
自分だけ、本格的に死んだフリして!

熊さーん。この人、生きてますヨ!」



銀時は神楽の頭を叩く。



「ホラ見ろ、生きてた!」



「ガタガタ騒ぐな。
心頭滅却して、死んだフリすれば、熊にも必ず通ずる。
さあ、目をつぶれ。」



愛が新八の所にたどり着いた時、目の前で熊が木を薙ぎ倒した。



「銀さん、神楽ちゃん!」



『二人とも!!』



出ていこうとした愛の腕を、笠を被った男が掴む。



「オイオイ。
今どき死んだフリなんて、レトロな奴らだねぇ。」



すると、男は猟銃を熊に向けて撃った。



『煙幕っすか…。』



「オーイ、こっちだァ。」



男と共に草むらに隠れる。



「アレは【正宗】っていってなァ。
いわば、この山のヌシよ。」



「アンタ…。」



「俺は摩理之介、奴を追う者だ。」



『とりあえず、ありがとっ!
助かったよ。』



「いやいや、可愛い嬢ちゃんが困ってんだ。
助けないわけには、いかないだろ。

まずは場所を変えて、飯にしよう。」
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