空色スパイラル2

□かまっ娘倶楽部編
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昼過ぎに万事屋の前から、大声が聞こえる。



「ふざけんじゃねェェェェ!!
テメーの蛮行によって、どれだけの人々が苦しんでいるのか、わかってんのかァァ!!」



「やかましーわ、クソババアぁぁ!!
回覧板まわすの遅れたくらいで、何でそこまで言われなきゃならねーんだァァ!!」



愛は扉の隙間から様子を伺う。



「なんだよ…朝一から…。」



寝ぼけた銀時が近づいてくる。



『銀時…なんか、お登勢さんと西郷さんが…。』



銀時は目を擦りながら、外に出る。



「んだよ、うるせーな。

オイ、うるせーんだよ。そこの妖怪二匹。
今、何時だと思ってんだ。
そして俺の血圧が、いくつだと思ってんだ。」



「うるせーんだよ、このダメ人間が!!」



「まっとうな人間は、とっくに活動、始めてんだよ!」



「お前ら、自分のこと人間だと思ってんのか?
それは遠い昔の話だよ。」


次の瞬間、銀時は地面に叩きつけられる。



『銀時!!』



「私にたてついたからには、落とし前つけてもらうよ。
コイツは預かるからね。」



「好きにしな。」



引きずられていく銀時の後を、愛は追いかける。

それを見ていた神楽は新八に尋ねる。



「新八ィ。あのモンスター、何アル?」



「ん?アレはお登勢サンと同じく、この街を支える【かぶき町四天王】の一人。

鬼神【マドマーゼル西郷】。」








「みんな〜、今日から入ってもらうことになった。
パー子ちゃんと裏方の愛ちゃんよ。」



銀時はツインテールのカツラを被って、濃い化粧をしている。
その隣で愛はニコニコ笑っていた。



「いやだ〜、カ〜ワ〜イ〜イ〜。
何、パー子って?」



「天然パーマのパー子よ。」



「ちょっとォ、ママ〜勘弁してよ〜。
私の客、とられちゃうわ〜。」



「愛ちゃんも可愛いわ〜!
女の子じゃなきゃ、惚れてたわ〜。」



銀時は愛の腕を掴み、Uターンする。



「スイマセン、おなか痛いんで早退しまーす。」



しかし、それは西郷が銀時の頭を掴んだため、叶わなかった。



「逃げられないわよ〜。
かぶき町で生きてゆくってことがどうゆうことか、アンタに教えてやるよ。」



「いや、もう知ってますから。住んでるんで。」



「アンタが化け物呼ばわりしたオカマ達が。
どれ程、気高く生きているか教えてやるよ。」



「いや、もうホント勘弁してください。
一応、僕。主人公なんで。」



『何言ってんすか?主人公は私っすよ。
それに銀時、すごく似合ってる。』



「え!?」



次の瞬間、銀時は西郷に背中を押される。



「オラ。新入りに、オカマ道叩き込んでやんな!」



銀時が顔を上げると、目の前には桂がいた。



「何やってんだ、ヅラ?」



「ヅラじゃない、ヅラ子だ。」



『ホントだ!小太郎だ!!』








それは少し前の事、桂はエリザベスと蕎麦屋にいた。



「オイ、親父。天そばは、まだか?」



「ヘイ、少々お待ちくだせェ。」



「少々だと?
これだけ時間があれば、カップラーメン何個つくれると思っているんだ?」



エリザベスが席を立つが、桂が制する。



「よせ、エリザベス。
最近は不逞浪人に対する取り締まりも、厳しくなってきている。
こんな所で無闇に目立つ真似をするな。」



「ヘイ、お待ち。」



店主の声が聞こえ横を見ると、自分より後の客にそばが出されていた。



「貴様ァァァァ!!
その者より俺の方が、先に注文を頼んだのを忘れたかァァ!!」



「お侍様、勘弁してくだせェ。
この方は特別な…。」



桂は刀を抜く。



「いかなる客に対しても平等に接するのが、貴様らの道であろう。
そこになおれ、成敗してやる。」



「いやね〜、お侍さん。
こんな事でムキにならないでよ〜。
ホラ、私のあげるから。」



「化け物はだまっていろ。」



そう言った瞬間、桂は殴り飛ばされた。



「オイ、誰が化け物だって!?」



それがここに来た経緯さしい。

そのまま、銀時と同じように引きずられて来たのだという。


桂は銀時と踊りながら、そう話した。



「以来、なんとか抜け出す機会をうかがっているんだが。」



「オイ、そこ。もっと腰を振れェェ!!」



「ヅラ、長くここの空気を吸いすぎたな。
お前はシャバに戻るのは、もう無理だ。」



「ふざけるな。
俺には国を救うという大仕事があるんだ。
こんな所で、こんな事をしてる暇はない。」



「こんな所でノリノリで踊ってる奴に、国も救われたくねーだろうよ。」



後ろで三味線を弾く、アゴの長いオカマが口を出す。


「ちょっとォ〜、ヅラ子もパー子もノリが悪いわよォ。
そんなんじゃお客様、気分悪くしちゃうでしょ。」



「何言ってんのよ、アゴ美。
この気だるさが、私の売りなのよ。」



「誰がアゴ美だ、コルァァ!!」



「パー子、さっき紹介しただろう。
この人はアゴ代だ。」



「違うわァ!!あずみだ、ボケェェ!!」



すると、客席から罵声が飛ぶ。



「オイオイ、何なってんだよ!
グダグダじゃねーかよ!

こっちはオメー、てめーらみてーなゲテモノ。
わざわざ笑いに来てやってんだからよォ。
もっとバカなこと、やってみろよ、化け物どもよォ!!」



酔った男に銀時はキレる。



「何だと、このすだれジジィ。
てめェ、その残り少ねェ希望を全て、引き抜いてやろーか!?」



「止せ、パー子。」



そこに、酒を運んでいた愛が地響きをたてながら、やって来る。



『お客様、店員への悪口は営業妨害になります。
即刻、店から立ちさっ………ひゃっ!!』



愛は自分の尻に手があるのに気づく。
そう、酔った男が愛の尻を撫でたのだ。



「なんだ、可愛い姉ちゃんもいんのかよ。
いゃー、いい触りごこちだなぁ。」



それには銀時だけでなく、桂もキレる。



「貴様っ!!」



しかし、男は一瞬にして固まる。

なぜなら、男の頭に大きな手が乗ったからだ。



「お客様、
舞台上の踊り子や従業員に、触れたり汚いヤジを飛ばすのは、禁止といいましたよね?

オカマなめんじゃねェェェ!!」



投げ飛ばされた男を見て、銀時と桂は唖然とし、愛は感嘆の声を上げた。
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