空色スパイラル2

□夢幻教編
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花子の話は、夢幻教と言われる宗教に、金を騙し取られたというものだった。



「はァ、インチキ宗教。」



『詐欺のよくあるパターンっすね。』



「そやねん。
エライもんに、ひっかかってしもて。

私、江戸へは踊り子になる夢、掴むために来たんやけど。
そのために貯めてた資金も全部、巻き上げられてしもた。」



「どうして、そんな?」



「だまされてん!!
あいつら、人の弱味につけこんで。」



花子はドリームキャッチャーと呼ばれる力を得るために、金を取られたらしい。

そう、前髪の下から出てきたのは、毛の生えたホクロだった。



「なァに?それは。」



「なんか、夢を叶えた人は身体のどっかに、毛の生えたホクロ、あったゆーてな。
高い金出して、つけボクロ買うてんやのに、なーんも起こらへん。
ホンマ、だまされたわ。」



お妙はすかさず、花子を鍋に突っ込む。



「あづァづァづァづァづァづァづァ!!」



「おのれはバカかァァァ!!
そんな、ちっさい黒豆で人生左右されて、たまるかァ!!
そんな汚らしいホクロを携えて、ダンス踊るつもりだったんかァ!!
毛をそよがせながら、踊るつもりだったんかァァ!!」



「ぶごォ!!ぶごォ!!」



「オーサカァァ!!はいあがってこい!
泥の中から、はいあがってこい!」



『お妙、ストップ!
そろそろヤバイから、息が続かないから!!』



花子は何とか鍋から脱出する。



「それで…他には。
他には、どんな被害にあったの?」



「よーし、よーし。よくやった、オーサカ。
次は30秒いってみよう。」



『神楽、ちょっとご飯食べてよっか…。』



「…それから、その夢幻教に入信させられて。
コツコツ貯めたお金、全部お布施でもっていかれてもうた。

あ…あと新聞の勧誘とか断り切れんで、9紙ぐらいとっちゃったり。
あと、よーわからんけど。
消火器、二十本くらい買わされたり。」



花子はお妙に泣きつく。



「もう、江戸は恐いわァァ!!
私、こんなコンクリートジャングルで生きてかれへん!」



「おめーは、ナマケモノしかいないジャングルでも、生きていけねーよ!!」



「大阪は人情の街や。
勿論、タチの悪いのもおるけど。
みんな、どこか他人とは思えん、あったかいモンもっとる。
けど、江戸モンはみんな冷たいねん。
他人は他人って、一線ひいとる。

ウチ…もうここでやってく自信ないわ。」



「死ぬ程苦しいなら、地元に帰った方が、いいんじゃない?
踊りなんて、どこでだって踊れるんだから。

はなから人に頼りきって生きてる人は。
どこいったって、うまくやっていけるとは思えないけど。」



花子は黙ることしか出来ない。



「でも、まだ。
江戸に残って、夢を追うっていうなら、私はいつでも力を貸すわよ。

江戸には江戸の人情ってもんが、あるんだから。
ねェ?銀さん。」



お妙は外でハーゲンダッツを食べている銀時に振る。



「俺ァ、やらねーよ。
宗教だのなんだの、面倒なのは御免だ。」



「そーっスよ。
姉上一人で何とかすればいいんだ。

夢幻教の創始者【斗夢】…。
奴はタチが悪いって有名なんですよ。
夢を叶えるって、うたい文句で最近、急速に信者を増やしてるんですがね。

その実体は胡散臭い神通力とやらを、ちらつかせて人心をまどわし。
お布施と称して、信者から金を巻きあげ、私服を肥やす。
ただのサギ師ですよ。」



『全く、サイテーっすね。』



「一度入ったら、なかなか抜けられないらしくて。
総本山に行ったきり、戻ってこない人もたくさんいるとか…。
花子さんは、まだ無事やめられただけでも、マシですよ。」



「そーそー。
わかったら、お前は大阪へ帰りならい。
通天閣の周りで、踊り狂ってなさい。」



すると、愛が銀時の前に来る。



『銀時、夢に向かって頑張る女の子を悪く言っちゃダメっす!!

花子ちゃん、私も協力するよ。』



「でもな…愛。」



「愛ちゃん、ありがとーな。」



お妙が部屋から顔を覗かせる。



「アラ、それは残念。
愛の好感度が下がりましたね。

それに夢見る女の子は、けっこう貯めこんでるものなのよ。
お金とり返したら、報酬もはずんだろーに。」



「ケッ、バカ言っちゃイカンよ。
なァ、新八君?
十七、八の小娘がなァ。」



神楽がいやらしい笑みを浮かべ、花子に言う。



「オーサカ。
幾ら貯めこんでたか、教えてやりな。」



「……………。」



「………え?マジでか。」
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