空色スパイラル2

□煉獄関編
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「あの人も意外に真面目なトコ、あるんスね。
不正が許せないなんて。
ああ見えて直参ですから、報酬も期待できるかも…。」



『総悟は意外と真面目だよ。
だって、上司が近藤さんと十四郎だもん。』



「私、アイツ嫌いヨ。
しかも、殺し屋絡みの仕事なんて、あまりのらないアル。」



「のらねーなら、この仕事おりた方が身のタメだぜ。
そーゆー中途半端な心構えだと、思わぬケガすんだよ。

それに、狭いから…。」



そう。現在、四人は一人用の駕籠に入っている。



「銀さんと愛さんがいくなら、僕たちもいきますよ。」



「私たち四人で一人ヨ。
銀ちゃん、左手。
愛、左耳。
新八、左足。
私、白血球ネ。」



「全然、完成してねーじゃん。
何だよ白血球って。一生身体、揃わねーよ。」



『エグゾディアでも五枚いるし、一人増やす?
ってか、銀時。近すぎ。』



銀時は駕籠の兄ちゃんに言う。



「うるせーな、一人用の駕籠に四人も乗せて、早く走れるか!!」



「あん?俺たちはな、四人で一人なんだよ。
俺が体で、神楽が白血球。
新八は眼鏡で、萌え要員の愛は猫耳と尻尾。」



「眼鏡って何だよ!
ってゆーか、眼鏡かけて猫耳してんの?
どーゆう人なの。」



「基本的には、銀サンだ。
お前らは吸収される形になる。」



『ちょっと、待ち!
銀時が猫耳と眼鏡って、想像してたら吐き気が…。』



「そうネ。愛の言う通り、嫌アル。
左半身は神楽にしてヨ!」



すると、前を走っていた鬼道丸の駕籠が止まる。



「あっ!止まりましたよ。」



「行くぞ、後を追うぞ!」



飛び出した銀時は、神楽と新八に踏み台にされる。



「いだだだだ!!
踏んでる、踏んでる。」



「オイ。ちょっと待て、代金!!」



「つけとけ!」



「つけるって、どこに!?」



「お前の思い出に!」



『銀時、急いで!!』



鬼道丸を追っていると、廃寺についた。



「廃寺…こんな所に…。」



中から子供の叫び声が聞こえる。



「今、なんか悲鳴みたいなの、きこえませんでした?」



銀時と愛は目配せする。



「…お前らは、ここで待ってろ。」



『様子見て、すぐに帰ってくるから。』



「銀さん、愛さん!!」



二人はこっそり中を覗く、そこでは子供達が楽しそうに遊んでいた。



「こいつァ、どーゆうことだ?」



『子供が…たくさん。』



すると、銀時の尻に衝撃が走る。



「どろぼォォォ!!」



そこには濃いおじさんがいた。








中に通された銀時と愛、新八は濃い和尚と向かい合う。
神楽は子供達と遊んでいた。



「申し訳ない。
これはすまぬことを致した。
あまりにも怪しげなケツだったので。
つい、グッサリと…。」



「バカヤロー。人間にある穴は、全て急所…。

アレッ?
ヤベッ!ケツまっ二つに割れてんじゃん。」



「銀さん、落ち着いて下さい。
元からです。」



和尚は話を戻す。



「だが、そちらにも落ち度があろう。
あんな所で人の家をのぞきこんでいては…。」



「スイマセン、ちょっと探し人が…。」



「探し人?」



「ええ、和尚さん。
この辺りで、恐ろしい鬼の面をかぶった男を、見ませんでしたか?」



『長い髪の鬼の面。
体には傷がたくさんついた男っす。』



「鬼?これはまた面妖な。
では、あなた方はさしずめ鬼を退治しに来た、桃太郎というわけですかな。」



「三下の鬼なんざ、興味ねーよ。
狙いは大将首。
立派な宝でも、もってるなら別だがな。」



和尚は何かを懐から出し、顔につける。
それは、鬼道丸の面だった。



「宝ですか…。
しいて言うなら、あの子たちでしょうか。」



「うぉわァァァァァァ!!
てっ…ててて、てめー。
どーゆうつもりだ?」



「アナタ方こそ、どーゆーつもりですか?
闘技場から、私をつけてきたでしょう。」



「え!?え!?ホントに。
じゃ、和尚さんが!?」



「私が煉獄関の闘士、鬼道丸こと…道信と申します。」








道信と銀時、愛は縁側に座る。



『抱かせてもらっても、いいっすか?』



「ええ、どうぞ。」



「オイオイ、いいのかよ。
どこの馬の骨ともしれん奴に、茶なんか出して…。
子供まで抱かすとは。

鬼退治に来た桃太郎かもしんねーぜ。」



「あなたも、いいのですか?
血生臭い鬼と茶なんぞ飲んで。」



銀時は子供達を見渡す。



「こんなたくさんの子供たちに囲まれてる奴が、鬼だなんて思えねーよ。
一体、この子たちは?」



「みんな、私の子供たちですよ。」



「あらま〜。
若い頃、随分と遊んだのね〜。」



「いえ、そういう事では…。
みんな、捨て子だったのです。」



「孤児…。
アンタ。まさか、こいつらを養うために、あんなマネを…。」



「私がそんな立派な人間に見えますか?
この血にまみれた私が…。」



「…アンタ、一体。」




「今も昔も変わらず、私は人斬りの鬼です。
昔から腕っぷしだけが取り柄で、気付けば人斬りなんて呼ばれる輩になっていました。
やがて獄につながれ、首が飛ぶのを待つだけの身と、なっていましたが。
私の腕に目を付けた連中に買われ、獄から出されました。
それが、奴らでした。

…あなた方は煉獄関を潰すおつもりのようだ。
悪いことは言わない、やめておきなさい。
幕府をも動かす連中だ。
関わらぬのが身のため。」



「鬼の餌食になるってか?
それはそれで面白そうだ…。」



道信は真っ直ぐ子供達を見つめる。



「宝に触れぬ限り、鬼は手を出しませんよ。
あの子たちを護るためなら、何でもやりますがね。」



愛は抱いている赤子を、銀時に渡す。



「ハハハハ。
鬼がそんなこと言うかよ…。
アンタ、もう立派な人の親だ。」



「汚い金で子を育てて、立派な親と言えますか…。」



「でも、今は悔やんでいるんだろう?」



「…最初に子供を拾ったことだって、慈悲だとかそういう美しい心からではなかった。
心に、もたげた自分の罪悪感を少しでも、ぬぐいたかっただけなんだ。」



「…そんなもんだけで、やっていけるほど、子を育てるのはヤワじゃねーよ。
なァ?クソガキ…。」



愛は道信を見て言う。



『最初、煉獄関で道信さんを見た時、ホントは凄くムカついたんす。
何も考えずに、私利私欲のために人を殺すなんて、許せないって…。

でも、違ってた。
私と同じで護るために戦っていた。
だからこそ、私達はその呪縛から、煉獄関からアナタを、子供達を助けたい。』



「………。」



すると、一人の少年が新八の眼鏡をかけて、走ってくる。



「先生、コレ!どう似合う?
ねェ、きいてる?先生?
先生、どうしたの!?

オイ、お前ら!先生に何言った!
いじめたら、許さねーぞ。」



「そいつァ、すまなかった。
こいつァ、詫びだ。
何かあったら、ウチに来い…。
サービスするぜ。」



『私のも、どーぞ。』



二人は少年に名刺を渡す。



「オイ、帰るぞ。」



四人の後ろ姿を見て、少年が言った。



「……変な奴ら。
そーいや、ウチに客が来るのって、初めてだね。先生。」



「………そうだな。
最初で最後の客人だ。」



第四十二訓 夢は拳でつかめ
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