空色スパイラル3

□第百九訓 華より団子
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「愛!新八ィィィ!」


『おうよっ!』


「はいィィィィ!!」


愛が団子を差し出し、新八が串から抜き、銀時が団子を投げる。


「たらふく、喰いやがれェェ!!」


投げられた団子を、神楽が口でキャッチする。


「両陣営、一歩もひけをとらない、せめぎ合いだ!!
しかし、恐るべきはあのチャイナガールの、胃袋。
底がないのか!!
力士相手に互角…いや、それ以上の…。

あ゙あ゙!!
ご飯を食べている!?
なんと!!団子の合間にご飯を!!」


「お前バカかァァ!!
もう、ご飯はいいって言ってんだろォォ!!」


「欧米流なんて、クソくらえじゃ!!」


その時、神楽の目に団子がヒットする。


「ぐあああああ!!
目が…目がァァァァ!!」


『神楽!!』


「神楽ちゃんん!!」


「目にタレがァァァ!!」


神楽は目を押さえて、悶え苦しむ。


「おおーっと、目にタレが入ったァァ!!
これは痛い!
しばらく立ちあがれそうに、ありません。

これは【餡泥牝堕】絶好のチャンス!!
ああーっと。
しかし、こちらも限界が近づいている。」


銀時と愛は、神楽と新八に背を向ける。


「新八…。
さっさと神楽、病院につれてけ…。」


『二人の分も、私らが食べとくから。』


「あとは、この。
糖分王に任せな。」


新八は叫ぶ。


「銀さんも愛さんも、無茶だ。
そんな腹じゃ!!

それにこれ以上、甘いもの食べたら…。
医者にも止められてるのに!
愛さんも、止めて……!」


『止めないよ。
どうせ、止まれなんかしないっすもん。』


「近頃の奴ァ、諦めが早くていけーねーよ。
なぁ、オヤジよ。」


「ああ、まったくだね。」


銀時と愛は団子を口に入れる。


「おおーっと、まだやる!
まだやるのか!!」


「あれだけの団子をたいらげ、もはや胃袋は限界のはずよ!!
なのに、何故食べるの!?
そんなに甘い物が好きなの!?」


「………悪いが、こちとら。
ガンコで諦めの悪い、アナログ派でね。」


力士も残り一人になった。


「もはや、両陣営限界!!
気力だけで、団子をのどに押しこんでいる!
時間は、あと一分!!皿は全く互角!!」


銀時と愛、力士の手が止まる。


「ああーっと。
ここへ来て、両陣営とも動きが止まったァァ!!
最後の最後に、障害となっているのは、何なのかァァ!?」


「どうしたのよ!!
なんで食べないの!あと一つ食べれば、勝ちなのよ!」


「う…う…団子見ただけで、吐きそうだ。」


団子屋の旦那は笑みを浮かべる。


「ムフフフ、飽きがきたか。
何百皿も同じ団子食べてりゃ、普通飽きもくるわな。」


「飽きたですって、そんなバカな!
今まで、あらゆる甘味を味わい、それを生かし、様々な甘味をつくり出してきた、私の一品を…。
飽きるですって。

そんなハズないわ、私の団子はないわ。
あなたのビンボーくさい、田舎団子とは違うの!
大体、あなたの方だって、動きが止まって…。」


「世界にある千の味をつくるのが、アンタなら。
団子しかしらねェ俺は、団子で千の世界をつくるしかないだろ。」


団子屋の旦那は、銀時と愛に訊ねる。


「旦那、愛さん。
アンタら、ウチに千回もきたか?
さすがに飽きたかね。」


「バカ言え、飽きちゃいねェ…。」


『ここの団子の味は病みつきになるもん。
飽きるわけない……。』


「飽きちゃいねーが、胃袋もなんも、みっちりで入れる袋がねェ。」


「金玉袋にでも入れな。」


銀時の口に、無理やり団子が入れられる。


『お、終わった……。』


「…色々やって、初めてわかる事もありゃ。
一個の事だけガンコにやって、初めて見えるもんもあるってことさね。」


銀時は団子屋の娘に、押し倒されている。


『銀時、大丈夫っすか!?』


「あ……ああ。」


団子屋の旦那は二人を見て笑う。


「そーだろ?
旦那、愛さん?」


「……ああ。」


『そうっすね。』


『「やっぱり、アナログ派はキツいっす〔ぜ〕」』


大の字で寝転ぶ二人は、万更でもないと笑みを浮かべた。


第百九訓 華より団子
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