空色スパイラル3

□第百九訓 華より団子
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神社の境内に人が集まっていた。
【魂平糖】対【餡泥牝堕】の団子勝負の会場である。

始まる前から、【餡泥牝堕】にはすごい人が集まっている。
しかし、【魂平糖】には一人も並んでいない。


「これは、勝負をする前に、決着がついてしまった館が……。
あっ、あれはなんだ!?」


鳥居をくぐり現われたのは、万事屋の四人だった。


「四人!!
たった四人ではありますが、魂平糖の方へ確かに向かってきている!」


四人は【魂平糖】の机の前に立つ。


「旦那…。」


「マジでタダなんだろうな。」


「ああ、恐らくこれでウチの団子食えんのも、最後だ。
たらふく食ってってくんな。
ヘヘッ。」


『オヤジさんが諦めてちゃダメっすよ。
まだまだ可能性はあるんすから。』


スタートの金が鳴る。


「【餡泥牝堕】に客が殺到!!
次々と皿が無くなっていく!!

一方【魂平糖】は…あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!
早い!なんとたった四人で、【餡泥牝堕】に対抗しているぅぅ!!」


「てめーらァァァ。
三日は何も食わなくていい位、たらふく食っとけェェ!!」


「飢えだァァァ!!
彼等は甘味を味わいになど来ていない!
ただ、飢えを満たしにきただけだ。
すさまじい勢いで、皿が積みあげられていくぅ!!」


四人によって、皿が積まれていく。


「一方【餡泥牝堕】これは…!!
多くの客に翻弄され、逆に皿がさばけなくなっているようだ!

これは分からなくなってきた!!
信じられない事ではありますが、たった四人であの多勢と互角に張り合っております【魂平糖】!」


団子屋の旦那は涙を浮かべる。


「旦那!!
すまねェ、そんなにしてまで、ウチの店の事…。」


「あーっと。
あまりの混雑ぶりに妥協して、【魂平糖】に流れる人だちが…。」


すると、銀時がやってきた客を飛び蹴りする。


「坂田家の食卓に入ってくんじゃねェェェ!!」


「お゙い゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!
何してんのォォ、旦那ァァ!!」


「おおーっと、なんという事でしょう!
せっかく来た人たちを、KOしてしまった!」


銀時は声を荒げる。


「ここは、ウチの食卓だァァァァ!!
何人たりとも入らせねェェェ!!!」


「食卓宣言!!
ウチの食卓宣言です!
勝負の事は一切、考えていないようです!」


「旦那ァァァ!!
言ってる場合じゃないの!!コレは勝負なの!!
んな事やってる暇あるなら、早く団子食べてェェ!!」


神楽はご飯と団子を両手に持ち、銀時に叫ぶ。


「銀ちゃああん!!
ご飯とも合うヨ、コレェェェ!!」


「何してんだァァァァ、お前ェェェェ!!
何で、団子をオカズにご飯食べてんの!
オナカ一杯になっちゃうでしょーが!!」


「白米食べないと、ご飯食べた気がしないネ。
欧米食なんか、クソ食らえじゃ!」


「だからコレ、メシ食いに来てんじゃねーって言ってんだろーが!!」


すると、新八と愛が手を止める。


「神楽ちゃん!
炭水化物と炭水化物を、一緒にとっちゃダメだって、言ったでしょーが!!」


『え、ダメなんすか?
焼きそばに白米とか、お好み焼きに白米とか、たこ焼に白米とか……ダメなんすか?』


「炭水化物に炭水化物って、関西人かよ!?

てか、お前らは何、タッパーにつめこんで、テイクアウトしようとしてんのォォ!!」


「冷凍庫で氷らせて、食べる時にチンすれば、あとで食べれるでしょーが!!」


「今、食ェェェェ!!
あとじゃ、意味ねーんだよ!
なんだ、そのビンボくせー発想ォ!!」


『貧乏臭いんじゃなくて、まんま貧乏なんすよ。』


どちらの机も、皿が捌けなくなってきた。
客も混雑している。

すると、【餡泥牝堕】の人垣が崩れて、力士がやってくる。


「はい、どいたどいたァァ!!」


「うわァァ、なんだァ!?」


「あああっ!!
アレは…力士!!力士です!!
突如現れた力士の集団が、人ごみを押しのけ、テーブルを占領!
すさまじい勢いで、団子を食べていく!
まるで、団子がマルボーロに見える!!
怪物!まさに怪物です!

【餡泥牝堕】500皿!【魂平糖】450皿!
50皿も差がついた!
これはくつがえし難い!」


団子屋の旦那は、思わず叫ぶ。


「旦那ァ!」


「心配いらねーよ。」


『これくらい……50皿くらい……。』


「ここまでは、腹ごしらえです。」


「腹こしらえちゃったの!?
ダメじゃん!もう、ダメじゃん!!」


「こっからが、仕事の時間だ。」


三人が立ち上がる。
横には軽快なステップを踏む、神楽がいた。


「カモーン。
前菜の時間はおしまいだヨ。」
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