空色スパイラル3

□第百八訓 んまい棒は意外とお腹いっぱいになる
2ページ/2ページ



一行は屋根の上を歩く。


「なんとか逃げられましたね。
…私、なんかスゴク疲れました。」


「これからが本場だぞ。
次は実際に重要人物と会い、説得するところを見せよう。」


「重要人物!?
誰ですか、それは。」


「愛同様、俺達になくてはならん男だ。」


『あ、万事屋。』


桂は万事屋に着くと、インターホンを押す。


「家賃なら、ねーって言ってんだろーが!!」


銀時が蹴破った戸が、桂の頭に命中する。


「桂さんんんん!!」


『おっ。
こっちから見ると、小太郎が生首っす。』


「フフ、銀時。
今日こそは、ウンと言ってもらおう。」


「愛、何やってんだ。
遅くならない内に、帰ってこいよ〜。」


『はーい。』


銀時は、桂を無視したまま、外れた戸を元に戻す。


「貴様は俺と共に戦う運命にある。
この腐った世の中を、共に変えようではないか。

容易ではない。
だが、貴様と俺なら可能なはずだ。」



『なんか、宗教の勧誘みたい。』


「桂さん、どうですか!?」


「まァ、まずまずの好感触だ。
だが、決定打に欠けるな。

花野アナ殿。
ちょっと、俺の懐からアレをとってくれるか。
切り札だ。」


すると、神楽がやってくる。


「愛、何やってるアルか?」


『ん〜ちょっとね。』


神楽は桂の声を聞いて、懐を探る。


「あっ、そうそう。それそれ。」


しかし、桂の切り札であるんまい棒チョコバーは、神楽の手に奪われていく。


「フフフ、銀時。
コレを見ても、そんな態度がとれるかな!?」


「桂さん。
切り札のんまい棒チョコバー、強奪されました。」


「何!?」


桂が首を突っ込んだままの戸を、新八が開ける。


「あ、こんにちは。」


「あ、こんにちは…。
…え?いやいやいやいや…いいってお茶は。
すいません、お構いなく。」


「何しに来たのォォ、アンタ!!」


その時、階下から真選組の隊士達が走ってくる。


「んごををををを!!また来たァァァ!!
桂さん、早く早く!!」


「抜いてはダメだぞ。
戸に穴が開いて、銀時に怒られる。」


「お前はここで、一生暮らすつもりかァ!?」


『小太郎、上に逃げるよ!』


一行は屋根の上を走る。


「花野アナ殿。
この後は愛と俺の所縁のある場所を、のんびり散歩しながら訪れ。
最後は親しい人からの思わぬ手紙で涙みたいな。

そういう【ウチくる!?】みたいな流れでいきたいのだが。
どうだろう?」


『おぉー、ちゃんと考えてるんだ。』


「何の話をしてるんですかァァ!!」


「まさか、手紙を用意していないのではあるまいな。」


「あるワケないでしょ、んなモン!
アンタの友達なんて、毛程も興味ないっつーの!!」


「フン。
そういうと思って、用意しておいた。
頃合を見て出せ。
頼むぞ、徹夜で書いたからな。」


「アンタが書いたんかィィ!!
そっちに泣けるんですけどォォ!!」


『言ってくれたら、書くだけ書いたのに……。』


「っ……。
すまない。つい、いつものクセで。」


「どんなクセよ!
てか、愛さん何食べてるの!?」


『さっき、神楽にもらったチョコバー。
花野アナも食べるっすか?』


「もういや!これじゃ身体がもちません!!」


「しっかりキャメラにおさめておけ。
攘夷志士の生き様を。」


「さっきから、イライラすんですけど!
そのキャメラって、古いんですけど、アンタ!!」


桂は花野アナを抱え、屋根と屋根を飛び越える。


「オイ、キャメラマン。
今の俺の跳躍、ちゃんととっただろうな!?」


「バッチリです、桂さん!!」


その時、屋根にバズーカが当たって、屋根は崩れる。


「あれ?」


「きゃああああ!!」


桂は花野アナに小声で言う。


「花野アナ…。
攘夷志士がどんな連中か、しっかり国民に伝えてくれよ。
頼んだぞ。」


花野アナを屋根の上に投げる。


「桂さんんんんんん!!」


「アバヨ、桂。」


『小太郎を甘く見るなよ。』


すると、狭い路地に軽トラが現れ、桂が荷台に落ちる。


「バイビ〜。」


「古うぅぅぅぅぅぅぅ!!
ヤバイよ、古いよ。
古すぎるよ、アイツ!!」


「オイ!そこの女、動くな。
貴様、桂の仲間だな。」


「いえ、私は取材で。」


「ウソをつけ。
ちょっと、こっちに来い。」


花野アナに伸ばされた手を、愛が掴む。


「また、愛ですかィ?」


『ホントに、その子は無実だよ。
私は……チョコバーで誘拐されてた。』


「はあ……。
前に忠告してあげたのに。
今回は……何だ、これは?」


「桂さんの…。」


花野アナはしみじみと手紙を読む。
そんな中、愛は手紙の音を聞いて、周りに叫ぶ。


『早く、逃げたほうがいいっすよ!』


愛が自慢の足で少し離れると、大きな爆発が起きた。


『御愁傷様っすね。』


後日見た、ニュースの特集で、花野アナは松葉杖だった。


第百八訓 んまい棒は意外とお腹いっぱいになる
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ