wisp

□鬼火
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《灰色。》



暗く重たくよどんだ空。
私は未だに死ぬことができない。
彼女はいつまで待ってくれているのだろうか?

街の通りを歩いても誰も私に気づくことは無い。

あれからどれくらい経ったのだろうか?
街には新しいモノがどんどん取り入れられ、不思議なモノばかりになっていった。
私はたくさんの人が行きかう通りにただひとり、うずくまっていた。

 どうしたの?

突然の声。
私は自分に話しかけているのではないと思ったが…顔を上げた。

すると、ジーッとこちらを見てくる少女がいた。
目が合う。
お互いに視線をそらすことなく見つめあった。
少女はニコッと笑う。

 おじさんもひとりぼっちなんだね

少女は両親から逃げてきたのだという。
家庭内暴力…今の時代では多いコトらしい。
私の時はそんな事ありえなかったというのに…。

 おじさん…死にたいの?

何故分かった…?
いきなり言われた言葉に目をまるくした。
少女が悲しそうに笑う。

私も…死にたいから。

私はその言葉を聞くと思わず立ち上がってしまった。
彼女は驚き後ろへさがる。

 そんなコトしてはいけない!
 君みたいな人は…生きなければ…

私は少女に彼女のコトを重ねて考えていた。
優しい心を悲しみで染めていた彼女のようなこの少女を、私は殺してはならないと思った。

 おじさんは…やさしいんだね、

 私はやさしくなどないよ。
 私は、私は…

少女は私に近づいてきた。
そして私の手を取る。

なんで…私の手がつかめるのか不思議だった。
それを聞こうとすると、少女は微笑んだ。

 私はおじさんみたいな人と話せるの。
 だからおとうさんとおかあさんは
 私をキライになったんだ。

涙を流した。
私もつられて涙が出てきた。
久々に思い出した温かさ。
私は誰も助けられていないのに、
助けられて…ばっかりだ。

 ありがとう、おじさん。

私はその言葉におどろく。
私は何もしていない。していなにのに…
少女は彼女と同じように、私に対して
ありがとう≠ニ言った。

 どうして驚くの?

おじさんは私を助けてくれたよ?

 助…けた?

 私は生きたいと思った。
おじさんみたいな人に会えるんだから。
私も...おじさんを助けたい。

私は少女に言った。

 生きるんだよ、

すると自分の体が光りだす。
ああ、やっと彼女の元へ行ける。

 ありがとう

そして私の体は…
         消えた。



いなく…なっちゃったね。

私、人を助けたよ。

これからも助けたい。

助けたい…けど、

おじさんゴメンネ。私、もう生きれない。
いや…


もう、生きてないんだ。

それでも、


 私ハ彼等ヲ助ケタイ。





(終)
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