wisp

□鬼火
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《明。》


嵐の夜。
雨がザアザアと大きな音をたてながら降っていた。
私はそれでも外に出なければいけない理由があった。

大雨の中、傘もささずに外へ飛び出す。
荷物を大事にかかえ、アノ洞窟へと向かう。

洞窟に着くと私に彼女が近づいてきた。
私は頼まれていたパンと、ブドウ酒を彼女に渡す。

彼女は微笑むと、パンを食べブドウ酒を飲んだ。
全てを食べ終えると、彼女は突然スクッと立ち上がった。

 ありがとう

それだけ言うと彼女は倒れた。
私は彼女を急いで抱き上げ、自分のコートを着せるとまた大雨の中走って行った。

もう助かるとは思っていない。
それでも、少しでも…長く生きてほしい。

私は彼女を病院へ連れて行った。
今は大丈夫だと医師は言った。
ただ…助からないかもしれないとも言った。
今日は手術はできない。
明日の夜、また来なさい。
そう言われ、私はトボトボと病院を出て行く。

私自身、彼女が助からないのは知っていた。
彼女に手術をするのは難しすぎる。
なぜなら…彼女は人間じゃないから。
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