wisp

□人火
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《ヒト》



故郷の声が聞こえた。
私は其方へ行かなければいけない。
私を呼ぶのは彼だから。
私の大切な彼だから。

荒れ果てた小さな村。
私はそこに生まれた。
自分の家の他はボロボロ。
壊れ落ち灰と化していた。

父はいない、
母もいない、
私は1人で生きてきた。
何も無い、この村で、
私は一人生きてる。

ある日街から使者が来た。
私を連れ村を去る。
私は泣いた。しかし届かない。
街へと連れて行かれた。

街では人々が見てくる。
たくさんの目がコチラを見る。
私はかくれて彼らを見る。
彼らの目はすさんでいた。

街の1つの家に着く。
それは大きなお屋敷。
誰も使わないような、
古く恐ろしい古城。

そこの主人私を見て、
喜び部屋へ連れて行く。
その部屋にはたくさんの子ども。
とらえられた仲間、
その中に彼がいた。

彼はとても優しく、
私と苦しみわかち合う。
しかし、主が部屋にきて、
彼を連れて去ってい行く。

彼はどこかへ行った。
私は彼を待った。
そこに主がやってきた、
彼はココに戻らないと言った。

彼は何故行った、
彼は何処に行った、
私は彼を見つける
見つけるため
抜けだした。

街の人々は見てる
私の姿を見てる
私は視線を避けて
露地裏へ隠れる。

彼のイバショを探す。
しかし彼はイナイ。
街の中心部、大きな時計塔に登る。

風が吹き塔が揺れる。
私は何処かにいる彼を呼ぶ。
誰の返事もない。
ただ静かな夜の下。

数ヶ月後の祝日。
街は貴族の祭りさわぎ。
私は塔から通りを見る。
そこにはいた、
彼が。

綺麗に着飾った服。
人形のように美しく、
それは上級貴族のもの。
私は彼をじっと見た。

服は誰のとも違う。
胸元にあるエンブレム。
私はそれで気づいた。
彼は王子だと。

彼は遠くなった。
私はもう彼に近づけない。
私は彼を見た。
何もせず、ただじっと。

すると、彼が見た。
コチラを見た。
私は身を乗り出した。
彼はコチラを見て笑った。

彼はそのまま去っていった。
私は会えた、
彼に会えた、
急いで塔からおりる。
そして彼を追った。

大きな重い鉄の門。
私じゃ中には入れない。
かたく閉ざされた門の前、
警護兵が2人いた。
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