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□とある朝の風景
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『とある朝の風景』



「よし、カンペキ」
鏡の前に立ち、神戸尊はそうつぶやいた。
分け目から綺麗に整えた髪、ピシッとした黒のスーツ、わずかに襟元を開けたシャツ。
当然、これから履く靴もピカピカに磨かれ玄関口に置かれている。
冷蔵庫からお気に入りの水のペットボトルを取り出すと家を出た。



愛車のGT-Rに乗り込み、いつもの道を走る。


いつもの敷地内に入り、
いつもの場所に車を停め、
いつもの建物のいつもの通路を歩く。


そして


いつもの部屋。



「おはようございまーす。」
開け放たれたままの扉をくぐり、いつもと同じ挨拶をする。

「おはようございます神戸君。今日は元気ですねぇ」
ティーカップを手に、先に出仕していた杉下右京が言った。本心なのか皮肉なのかは分からない。
「やだな、杉下さん。ボクはいつだって元気ですよ?」
名札を裏返してデスクにカバンを置くと、ペットボトルの水を飲みながら神戸もいつもの調子で返す。
「おや、そうでしたか。それは失礼。」
と、杉下。
「いえ、おかまいなく。」
と、神戸。
そんなやりとりをしていると、決まってやってくるのが隣りの課の角田課長。
いつものカップを手にしている。
そしていつもの台詞。

「よっ、ヒマか?」


「ぷっ…」

神戸はお決まりすぎるその状況に思わず吹き出してしまった。


「平和ですね、杉下さん。」
「平和ですねぇ、神戸君。」

いそいそとカップにコーヒーを注ぐ角田を横に、二人は微笑んだのだった。


Fin

 

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