ぶん
□お前の分まで
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「円堂ー!」
俺の名前を呼びながら駆け足で近づいてくるのは
幼なじみで、親友で、チームメイトで、
俺の大事な恋人
「風丸ー!」
その恋人の名前を呼んで俺も彼の元に走り寄る
「すまない、委員会の仕事がなかなか終わらなくて…」
「いいって!そんなこと!」
大好きなお前を待つ時間なんて苦でも何でもない寧ろいつお前が来てくれるかずっとドキドキしてた……
なんて、そこまでは流石に恥ずかしくて言えないけど
それぐらい俺は風丸のことが大好きで、愛してるんだ
「じゃあ早く帰ろうぜ!」
「ああ!」
俺が手を差し出すと
それより一回り小さい風丸の手がゆっくりその上に乗せられる
俺はその手を壊さないように優しく、でも逃がさないように力強く握った
二人で帰る時にいつも通る河川敷
今は丁度日が沈む時間帯で周りの景色が夕日に照らされて、赤みがかったオレンジ色に染まっている
俺はその道の途中で足を止める
「円堂?」
急に足を止めてしまったので手を繋いでいた風丸が少しよろめいて此方を振り向く
「どうしたんだよ、いきなり立ち止まったりして…」
「…風丸」
お互いに見つめ合う形になったところで俺は話をきり出す
「風丸、あのさ、」
「何?」
「え、と…これ、受け取ってくれ!!!」
俺が差し出したのはシルバーのリング
内側には『M&I』と彫ってある
宝石も何もついてないけど、それは夕日に当たってキラキラと輝いている
やべ、たぶん、いや絶対俺、今顔真っ赤だ
「が…頑張っておこずかい貯めて買ったんだ!俺、まだバイトとかも出来ないしこんなのしか渡せないけど、いつか絶対これより立派な指輪買ってみせる!!そんで、絶対風丸のこと幸せにするから!!!」
すこしたどたどしくなったけど一息にそう告げる
風丸はなかなか反応を見せない
不安になった俺は下げていた頭を少し上げて風丸の顔を覗く
「…か、風丸…?」
チラッと彼の顔を見るとその目からは涙が零れている
「ご、ごめん!!やっぱり、嫌だった?!」
「…っいや、違うんだ、
あまりにも、嬉しくって、」
そう涙を拭いながら言った
「ありがとう円堂!俺、この指輪、大事にする!
それに、お前はこんなのって言ってるけど、俺にはどんな宝石よりも、この指輪が素敵みえるよ!」
満面の笑顔でそう言われた
嬉しすぎて俺はその場で風丸を抱きしめた
そしてどちらからともなく、触れるだけの
でもとても優しく、幸せなキスをした
「幸せにしないと許さないからな!」
まだ目に薄く涙を浮かべながら彼は言った
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