ぶん

□優しいあの子
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俺には恋人がいる
可愛くて美人で面倒見がよくて…

いいところなんて数えたらきりがないくらいの自慢の恋人が



そんなアイツだから付き合う前はライバルは沢山いた

俺の周りの奴らの殆どはアイツに好意をもっていた

そんな中 ダメ元で告白したらOKをもらうことができた

それから 俺たちのなかは少しずつ進展していった


最初は手を繋ぐのも恥ずかしがっていたけど

今ではお互いの部屋のベッドで一緒に寝たり
初体験も済ませた

今更だが自分はすごく幸せ者だと思った

「なぁ」

「何だ?風丸」

「ずっと、俺のそばにいてくれよ…?」

「当たり前だろ!頼まれたって離れてやるもんか」








だが、最近は大会が近いこともあり練習が忙しくてなかなか二人だけの時間を作ることが出来なくなった

久しぶりに二人きりになれても風丸は練習に疲れてすぐに寝てしまうため手を出しにくい



今まで彼一筋でいた俺も
彼にバレないように、



浮気をするようになってしまった
悪いとは思っている
でも 一度やってしまったことは取り返しがつかない
俺も歯止めがきかなくなって最近は風丸よりもソイツと一緒にいる時間のほうが長くなった


彼にはバレないようにしていた俺だけど
やはり気づかれてしまった

怒られる?
もしかしたら別れろと言われるかもしれない


だが
風丸は
「最近はあんまり一緒にいられなかったし、仕方ないよな。俺のほうこそごめんな!」

と言って
浮気されたことなど全く気にしていない様子だった


いっそのこと強く怒ってくれればよかったのに

あんな風な言い方しかされなかった俺は
反省することなく何度も何度も
浮気を繰り返してしまった

そのたびに風丸にバレてしまったが
最初の時と殆ど変わらず「今度は気をつけて」
ぐらいのことしか言われない

そのうちに俺は浮気をするのに抵抗がなくなってしまった


ある夜、ふと目を覚ますと隣に寝ていた風丸がいないことに気づいた

トイレかとも思ったが何時までたっても戻ってくる気配がない

心配になってきた俺は自室を抜け出して風丸を探すことにした

浮気ばかりしている俺だがやはり風丸以上の相手なんてこの世にはいない

と思えるほど彼のことが好きだ


しばらく廊下を歩いてい
ある部屋の前で俺は立ち止まった

そこは風丸の部屋
ドアが微妙に開いていたのできっと彼はこの中にいるのだろう

普通にノックをして入ればいいんだろうが
俺はなんとなくその隙間から部屋を覗き込むような形で中をうかがった

部屋の中は真っ暗だったがドアの隙間から漏れる廊下の明かりでかろうじて中の様子を確認することができた

するとそこには



物凄い形相でメモ帳らしきものに何かを書いている風丸の姿があった

何かの怨みの念でもぶつけるかのような形相で



見なければよかったと後悔した俺はその場から逃げるように自室に戻った

それから数日後
風丸は何時ものように俺に接してくれる

普通に
恋人として接してくれる

だが
あの光景を見た後だと
そんな風丸の姿が逆に恐ろしく見えた


(あのメモ帳には、何を書いていたんだろう…?)


一度気になると
見たくてたまらなくなり、トイレと偽って
練習中に抜け出し風丸の部屋へと向かった

今なら風丸も部屋には戻ってこないだろうと思い

悪いとは思いながらも部屋に忍び込み、あのメモ帳を探した


やっとの思いで見つけたメモ帳を恐る恐る開き中を見る

【浮気をした −3点 あと88点】

【浮気相手と手を繋いだ −3点 あと85点】

………

【浮気相手とキスした −3点 あと61点】





な、なんなんだこれは
自分が今までしてきた
浮気行為などが
点数化されて 分厚いメモ帳にびっしりと書き記してある



ガタンッ!!


「っ!!??」


扉が勢いよく閉まる音がしたので振り向いてみると

そこには このメモ帳の持ち主であり恋人の風丸が

恐ろしいほどの無表情でそこに立っていた

今まで彼のこんな顔は見たことがない



しばらく沈黙が続き
風丸は静かな、でも今までにないほど低い声で言った






「それが0点になったら、
死刑だからね…?」









あとがきという名の反省文→
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