一周年!!

□絡めた指先
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昔から、だ
私は、幼い頃から、勉学に打ち込み
それ以外に興味を示した事も、それが苦だと思った事も無かった


ただひたすらに、机に向かい、ペンを走らせ
勿論、友達と呼べる関係の者なんて出来たことがない
増してや恋など

自分には無縁のものだと
私の周りには、霧のような黒いものが視界を覆って
何も見えなくなっていた











無心に勉強を続け、いつしか研究者となっていた私は
人間の潜在能力を増強する、未知の隕石
エイリア石の研究に携わる事になった

まだ不明な点の多い不思議な石
人体にどのような影響を及ぼすのかも分からない

こんなに魅力的な研究材料は他には無い

これほどまでに胸を躍らす経験は滅多に無い


無論、私はエイリア石の研究にのめり込んでいった
この石が、私の人生さえも変えてしまうような
出逢いを齎してくれるとも知らずに









いつしか世界征服などという子供じみた夢を持っていた
もしかしたら、ただ自分の研究の成果を
世に知らしめたかっただけなのかもしれない
私の今までの人生は、間違っていなかったと


自らサッカーチームを作り、エイリア石の力で強化した
全ては自分の野望のため…



だが、その中に見つけてしまった

紫の光に照らされる水色を


絶望に押し潰され、消えてしまいそうな君は
エイリア石の力で狂気にも似た自信を得て
笑顔とは呼べない深い笑みを浮かべている


その姿は、淡く、儚く、美しい



この歳にして、恋というモノをしてしまった事に気がついた
それも、年端もいかない子供に、だ

私は自分を嘲笑した


それでも、この気持ちは消え去るどころか
恐ろしいほどに大きく成長していく




「研崎、様」



凜とした君の声
その顔はエイリア石の影響か、子供らしからぬ艶やかな色気を含んでいる

私の体に腕を絡ませ、胸に頬をスリ寄せてくる



「研崎崎、好き、です…研崎様…」


「私もですよ…風丸君」



違う

彼の言う「好き」は

きっと、力を与えた私に対する敬意
神を信仰ようなもので、
消して「愛」含んではいないのだ






きっと君は、いつか私の元から離れてしまう

「好き」の違いに気づいてしまう時が来る


そんな時、君を私に縛り付けるような事はしたくない
私に、人間らしい感情を教えてくれた君に



手を握る事はしない

君が私から逃げ出せるように

小さく指先だけを絡ませた















言葉にして伝えた
態度にして伝えた


それでもあなたは、また悲しそうな顔をする


俺の気持ちに困ってる?好きって言われたら迷惑??
俺は、本気であなたを…愛しているのに…


いつかこの気持ちが、あなたに届くように



「研崎様…」



遠慮がちに指先だけ絡んだ右手がもどかしい

少しでもこの想いを伝えたくて、
俺は両掌で研崎様の手を包んだ








END







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