にまんだっ

□ケンカップル再び
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歳は変わらないけど同棲してる設定













「円堂の、馬鹿野郎おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



キーンと耳の奥に残響して、鼓膜が破れたのではないかと思うほどの大声を上げて
風丸は嵐のようにその場から駆け出して行った



「勝手にしろバアアアアカ!!」


一瞬その声に怯んでしまった円堂も
次の瞬間には大分遠くなった背中に悪口を吐きつけて
クルリと回れ右をした



またこの二人のケンカが始まった








遡って約一時間前


円堂と風丸は珍しく遊園地へデートに来ていた

最初のうちはチラホラと見える他のカップルのように割りと仲良くデートを続けていた

なんとなく手を繋いでみたり、観覧車に乗ってみたりと
恋人らしくしていた


だが、二人がお化け屋敷に入ったあたりから
空気が一変した



もともとお化け、幽霊の類が苦手な風丸

当然ビクビクとしながら、無意識に円堂の服の裾を掴んだりしていた

それに気付いた円堂は
怖いのか?、情けない、などとからかい始めたのだ

それが悔しかった風丸は涙目になりながら平気を装って
何度もお化け屋敷に入って見せた
最後の方は若干放心状態になっていて
円堂は堪えきれない笑いを必死に堪えていた



次に腹を立てた風丸は反撃に乗り出した

ジェットコースターへの連続挑戦だ

日頃から早い物に馴れている風丸は平気だが
それほど免疫のない円堂は魂が抜けたように真っ青な顔をしていて

それを見た風丸はさっきのお返しとばかりに
盛大に笑ってみせた



途中からただの我慢大会に発展した二人は
もはやデートどころではなく
いがみ合いがヒートアップして大喧嘩に至ったのだ











風丸は怒ったまま遊園地から早々に出て行ってしまい

円堂だけが残った


謝る気などさらさらない円堂は
フンッと鼻を鳴らして
自分一人でアトラクションに乗り始めた



何度も乗ったジェットコースター
受ける風にはもう馴れてしまった

他のアトラクションも
どれに乗っても一人では全く面白くない


最後にもう一度観覧車に乗ろうかと考えたが

さすがに一人きりで観覧車は寂しすぎると思ったのでやめた


一息深い溜め息をついて、またやってしまったと後悔する

こんなんでよくも今の今までこの関係が続いているものだと
自分自身でも疑問に思う

ケンカしては仲直りの繰り返し
元々幼馴染のため、あまり遠慮のいらない関係だった事もあるが

そのためになかなか正直にもなれない



日も傾き始め
少しずつ暗くなっていくにつれて
周りのカップル達の距離はぐっと近くなっていく

男一人には場違いだと
居ずらくなった円堂は
遊園地を後にした








家に帰ってみると
玄関に風丸の靴が無いことに気がついた

大分自分より早く遊園地を出た筈なのに

胸の奥がザワザワと騒ぎだし
円堂は玄関から飛び出して行った








円堂の足は自然と鉄塔広場に向かっていた
なんとなく、幼馴染の勘というものだろう

案の定、風丸は広場の木に寄りかかり
膝を抱えて顔を伏していた


全力で走って来た円堂は、息を切らしながら近づいて声をかける



「っ…はぁっ…な、にやってんだ、馬鹿丸…」


こんな時にまで悪口をほざいてしまう自分の口を憎く思う



「…円堂は、」


「…あぁ?」


「円堂は俺の事、…好きか?」


「な、お、お前何言って///……風丸…?」



面と向かって好きだなんて言った事などない円堂は赤面したが
次に覗いた風丸が
涙を流している事に気がついた



「何で…」


「俺達、ケンカばっかりしてるのに…恋人でいていいのかなぁ…
おれ、全然素直じゃないし…ぅ…可愛くもないから、え、どぉの事好き…なのに…嫌われてるんじゃ、ないかっ、て……」


いつもは見せない弱い風丸
静かに流す涙だって、見るのは初めてに近かった
いつも強気な口を叩く風丸が、今は何だか
儚く、直ぐにでも消えて無くなってしまいそうで

円堂は思わずその身体を抱き寄せた




「えん、ど…?」


「何泣いてんだよ…好きに決まってんじゃん…
……察しろよな、馬鹿丸」

「だれが、馬鹿だよ…ふ、ぅ…」



未だに止まらない涙を拭いながら
風丸は必死に円堂にしがみついた

その光景に愛しさが込み上げた円堂は
風丸に強制的に上を向かせ、その柔らかい唇に己の唇を重ねた


幸福感に満たされる中


円堂がその表情を密かに携帯に収めている事など
風丸は知る由も無かった






(よっしゃー、弱味ゲットだぜ…!)


(何ニヤニヤしてんだ円堂…?)








END







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