にまんだっ

□陽向にて
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春の香りが鼻を擽る
晴天の日曜日


ぽかぽかと、柔らかい日差しが窓から照りつける

その程よい暖かさに自然と瞼が落ちてきてしまいそうになるのを
寸手のところで抑える



「風丸ー、寝るなよー」


「寝ないよ、円堂こそ眠そうじゃないか」


「んぅー…」



ウトウトしてしまっているのは俺だけではないようで

サッカーバカと称される俺の幼馴染兼、恋人も
さっきまでサッカーやりたいだの何だのと言っていたのだが
この春の陽気にやられてすっかりおねむモードだ



今日は珍しく部活は休みだった

だから日中は円堂の家で休日中に出されたいつもより量の多い課題を終わらせて
それからゆっくりと久しぶりの休みを楽しもうと決めているのだ




「あとちょっとだから、ちゃんとやれよ?」


「わかってる…ぅ」



口ではそう言っているものの、円堂の瞼はもう半分近く下がり
額がノートにくっついてしまいそうな位置まで近づいてはまた少し起こすを繰り返している


どちらかといえばこの勉強は円堂の課題を終わらせるために行っている
俺は自宅で昨日の内に終わらせた

それなのに、ここで円堂に眠られてしまったら



そんなことは考えていたら、いつの間にか円堂は完全に机に頭を預けて
シャーペンを持つ手はピクリとも動かなくなってしまっていた

それを起こそうと
長く座っていた所為で少し痛くなってしまった足で立ち上がる



「えーんどー?」


手の平でペチペチと頭を軽く叩きながら
チラリとその顔を覗いてみる

すっかり閉じられた瞳
気持ちよさそうに眠る円堂は
いつもピッチで活躍する頼れるキャプテンの面影は薄れて
ずっと幼く見える


その姿が何だか可愛らしくて、起こすのが勿体無くなってしまう

が、これではいけないと円堂の方に手をかけ
ユサユサと身体を揺すってやる



「円堂、起きろよ」


「んー…」


「まだ課題終わってないだろ?」


「うー…ん」


グラッ


「あっ、うわあ!」



揺さぶった勢いで円堂の身体が傾き

机からこちら側に崩れ落ちてきた



ドサッ



「いっててて……
円堂、大丈夫か…?」



落ちてきた円堂を受け止めようとした結果
俺は思いっきり尻餅をついてしまった

我らがキャプテンはというと

俺が膝枕をする形でその場に寝そべっている


未だに眠りから覚めようとしないコイツ
どんだけ眠り深いんだ



「円堂…」


「んむぅ…」



俺の膝に頭を置いて

頬を擦り付けてくる
その姿はまるで猫のよう

「んー、風丸…いー匂い…」


不意打ちの言葉に頬が熱くなる


寝ぼけているのか確信犯なのか


もう起こすのは諦めて

まだふわふわと降り注ぐ優しい日差しに照らされながら


寝転がる恋人の頭を一撫でしてから

自分も斜めに身体を横たえて瞳を閉じた






後日、登校早々コイツに泣きつかれたのは言うまでもない







(風丸ぅー宿題がぁー…)

(自業自得だ)








END






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