にまんだっ

□俺と、俺
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俺にそっくりな奴がいる
いや、そっくりどころの話しじゃない
これは…



「誰だお前」


「はぁ?お前こそ誰だ」


「俺は風丸一郎太だ」


「俺も風丸一郎太だ」


「ふざけたこと言うな!風丸は俺だ!」


「俺だって風丸だ」



顔、声、性格に至るまで
殆ど全てが俺そのもの

違う所と言ったら

コイツの方が性格が少し乱暴って所と(その所為もあってかコイツはチームメイトから闇丸なんて呼ばれてる)

俺は髪を結い上げてポニーテールにしているところを
コイツは下ろしていると言ったところ
しかも何故か髪は重力を失ったように若干宙に浮いている


俺はコイツが気に入らない

自分にそっくりだから、なんて理不尽な理由ではなく

見てると何だかイライラするから(あ、これも十分理不尽かもしれない)



「またやってるのかー?お前らチームメイトなんだから、もう少し仲良くしろよなー」


円堂は呆れ笑いを浮かべて言うが
いくら円堂の言う事でもそれは聞けない

誰にだっているはずだ

どう頑張っても仲良くなれない、どうやっても好きになれないヤツってのが

俺にとってのそれがコイツなのだ




「ほら、仲良くしろだってよ」


そう言いながら俺の腰の辺りを抱いて引き寄せてくる
背筋にゾワリと不快な何かが走る


「触んな!つか何故腰を抱く!?」


「照れてんのか?ハハッ」



俺はこんだけ拒絶してるのに、コイツは特に俺を嫌っているわけではないらしい

むしろ今のように腰に手をかけたり
頬を撫でてきたり
時には尻や胸に触れたり
明らかにチームメイトにするには過激すぎるスキンシップを求めてくる


しかも俺限定で


これも俺がコイツを苦手視してしまう原因の一つなのかもしれない





それに…


「うおおっ」


ドシュッ


「ナイスシュートだ!闇丸!」



コイツのサッカーセンスは並外れてる

足の速さも、シュートの威力も、

何だか、自分の居場所を奪われた気分になる

同じ顔してるから尚更だ


って、これはただの嫉妬じゃないか

きっと俺、今すごい汚い目でアイツの事見てるんだろうなぁ…

きっと俺がアイツを嫌いなのも
こんな勝手な俺の嫉妬からなのかもしれない

俺ってこんなに嫌なヤツだったんだ…





「何俺の事見つめてるんだ?」


「うわぁ!」



突然目の前に現れた
さっきまで眺めていた同じ顔に
驚きのあまり後ろに飛び退く



「熱い視線送ってくれちゃって、…もしかして惚れた?」


「馬鹿言うな!誰がお前なんかに……っ!!!???」



視界いっぱいに
焦点が合わない位置まで近づいている顔
唇に触れる柔らかい感触

暫く思考が停止してしまい、ハッと我に返って相手の胸を押して引き剥がそうとする

が、頭の後ろをガッチリと抑えられ
もう片方の手を腰に回されて全く動けない



「んーー!!んぅーー!!!…っぶはぁ!」


「色気がないなぁ、そんなに抵抗しなくてもいいだろ?」


「っざけんな!バカヤロー!!」


バキッ


ヤツを殴り飛ばしてベンチまでノシノシと歩く
思った以上に力が籠もっていたようで
アイツは華麗に宙を舞った後、人形のようにボトリと地面に着地した


チームのみんながそちらに駆け寄るの見てみぬフリをしてベンチに座る


顔が火照ったように熱いのは
きっと腹が立っているからなんだと自分に言い聞かせた










END






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