捧げ物

□On the wind
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※いろいろ捏造









最近俺の両親は
仕事が忙しくてなかなか家にいない


だから一人っ子の俺は結果的に一人きりで過ごすことも多くなる訳だ


まあ、俺は中学生なわけだし、両親が居なくても大概の家事は出来るさ


この前ちょっと手を滑らして
皿割っちゃったけど

その前は料理焦がして
危うく火事沙汰になるとこだったっけ…

そういえば今日は
部屋を掃除するつもりだったのに
何故だろう…掃除する前より部屋が汚くなってる気がする…


前言撤回

俺はかなりの不器用で家事も、自分でいうのは悔しいが全然出来ない



それを心配した親が

今度家を空ける時に
家政婦を頼むといいだした


俺はそれにはあまり賛成出来なかった

自分で家事が出来ないことは分かってるけど

他の人に頼るのもあまりいい気はしなかったからだ



家政婦募集の広告を出すと言うので

俺はその広告に
少しイジワル、というか

贅沢な条件を付け足した


【優しくて、美人で、親切で、おもしろい人】


って条件



勿論こんな人が来るなんてのは期待してない

無理な条件を出せば
誰も家の家政婦を名乗り出ないだろうと思ってやった



「ちょっと守!なんなのこれは!?」



当然、といえば当然だろうが
それを見た親は怒ってそれをゴミを燃やすための火の中に放り投げてしまった


燃え残った広告の切れ端が空に舞い上がるのが見えた










数日後

家政婦募集の広告を見て何人かの女の人がこの家の前に並んでいた

両親は今朝早々に仕事へ行ってしまったため
俺がその何人かの中から家政婦を選べというのだった


どいつもこいつもあまりパッとしない

どうせ皆お金が目当てで来ているのだろうから


いっそ全員追い返してしまおうか…





そう思っていた時だった




いきなり物凄い突風が吹いてきた


ビュオォ、と音を立てて吹くその風に煽られ
家の外に並んでいた家政婦候補達は
それによって全員吹き飛ばされてしまった


「な、何が起こったんだ…?」


突然の事態に驚き
俺はその場で呆然としていた



「…この広告出しだのって、この家か?」



すると、何処からか人の声がした

玄関を出てキョロキョロと周りを見渡すが
そこには人影一つ見当たらない



「上だよ、上!」


「…え!?」



声の通りに上を見上げる

そこには





一瞬自分の目を疑った


見上げたそこには宙に浮かぶ人の姿


傘のような物をさして
まるで風船のようにふわふわとゆっくり地面に降り立つ


改めてその人物を見ると、どうやら自分と同じぐらいの年頃の子のようだ



「…おま、君は…誰?」


お前、と呼びそうになってすぐに訂正した


ソイツがあまりに綺麗な容姿をしていたからだった


まるで晴れ渡った空のような水色の長い髪に
そこに流れる雲のような白い肌
どこまでも整った顔立ち


美人、としか言いようがなかった



「俺は風丸一郎太
この広告読んでここまで来たんだけど…」


そう言って彼(自分のこと俺って言ってたから多分男)か取り出して見せたのは
あの時親に燃やされてしまった広告の切れ端だった


広告を見てやってきたと言うことは家政婦の希望者なんだろうけど…
いろいろと怪し過ぎる


傘で空を飛んで来るなんてまずありえないし
それを考えるとさっきの家政婦候補達を吹き飛ばした強風もこいつがやったのだろう…


だけど、追い返す気には何故だかなれなかった


なんとなく、こいつならいいんじゃないかと思ったんだ




「…分かった、風丸が今日から家の家政婦な!」


「ホントか?ありがとう!」



その笑顔があんまり無邪気なものだから
少しドキッとしてしまった
よく考えてみたら
自分と明らかに同い年ぐらいなのに
家政婦なんて出来るんだろうか?と今更ながら疑問に思ったが

その疑問はすぐに解決された



とりあえず風丸を俺の部屋へ通した



「わっ、汚っ!」


「アハハ…」



そういえば、この前掃除失敗してそのまんまだった…

部屋に通すのはマズかったか…



「いきなり大仕事だな」



そう言うと
風丸は指をパチンッと鳴らした


すると



なんと部屋に散乱していた物が
全てひとりでに元の場所へ片付いていくではないか


「わあ、何だこれ!?」


「ふふ、俺、実は魔法が使えるんだ」


まあ、さっき傘で飛んでたの見れば分かるか、
そう言ってにこにこ笑う風丸



その後も風丸は
魔法を使った家事を幾つも披露して見せた


リビングから家全体の掃除、洗濯、アイロン掛け、皿洗い

料理は魔法を使わず、自らの手で作ってくれた
風丸曰く、料理は自分の手で、心を込めて作らないと美味しく出来ないらしい


勿論、その手料理は凄く美味しかった




風丸は凄く優しくていい奴だった

いろいろやってもらうばっかりじゃ申し訳無いので
多少の手伝いはしたし、

一緒にテレビ見て笑ったり、サッカー教えてあげたり


その時に向けられる綺麗な笑顔に
俺は毎回ドキドキさせられた

この気持ちはきっと…








風丸が家にやってきてから一週間

そろそろ親が帰ってくる頃だ

それはつまり、風丸とお別れってことになる


嫌だと思った


風丸はもう既に荷物を纏めて帰る準備をしている



「…風丸」


「ん?」


「…行かないで」



そう言うと、俺は風丸に後ろから抱きついた
最近気づいたが俺の方が少し身長がでかいから、風丸に覆い被さるような形になる


「へ?ちょ、円堂?何やって…」


「俺、もっと風丸と一緒にいたいよ…

家政婦とか、友達とかじゃなくて

もっとそれ以上に俺、


風丸のこと、好きだから…」



言った


ついに言った



恥ずかしかったけど
その気持ちは本当だった



「……それ、ホント?」


「嘘でこんなこと言うわけないじゃん」


「そ、だよな…」



ふっと目をやると
顔こそ見えないものの
髪の間から微かに見える耳が真っ赤に染まっているのが見えた


もしかして、照れてるのか?



「俺、魔法使ったり、気持ち悪がられてると思ってたんだけど…」


「そんなことある訳ない

俺、風丸大好きだ!」


「〜っ/////」



いよいよまるで茹でダコのように真っ赤になった風丸に
俺はさっきよりも力を込めてギューッと抱きついた





(それは二人を繋ぐ魔法)





END







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