ながいぶん

□陰の章 上
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はしぞろえ はしぞろえ

御簾に映った 唐衣

お化け葛篭に 鼓の音 桑

の実つけた 華褥 絹糸紡

ぐ まがいだま 静かに揺

れる はしぞろえ

偏に響く

きらい著 はしぞろえ…















ある夜のこと


ここはとある山奥にある屋敷の前


この屋敷は町でも有名な金持ちの所有する

かなりの面積を持った屋敷であった






「…ここで間違いないよな、吹雪」


「うん…」



その屋敷の門前に立つ
二つの影


人の二倍、三倍もの大きさのその門は
何故か微妙に開かれており
門にはベタリと封印札が張り付いている



「この封…影山殿の…!

やっぱり、ここに…?」


「ああ、きっと…」



門前で会話する二人

片方の名は風丸

もう片方は吹雪



二人はこの屋敷の裏にある神社に暮らしていた



幼いころからそこに住み、一切外に出たことが無かった

だが今日

その神社の神主にして、風丸たちの父親代わりとなっている
影山という男が

置き手紙を残して消息を断ったのだ


置き手紙に記されていたこの屋敷に来れば
何か分かるかもしれない、と


神社を抜け出し
やってきたのだった






重い門をググッと押し開き、中へ入る


中は広い庭となっていて、

門の中へ入ったとはいえ屋敷の形はまだ見えない


それよりも気になったのは


この門を潜った瞬間
感じた

何か不穏な空気

何やら善くないものの気配を感じた


門に張ってあった封印札といい


ここで何かが起こった、または今まさに起こっているのかもしれない



「誰も…いないな」


「何が起こってるんだろうね…っ!ゲホッゲホッ」


吹雪は急に咳き込み、その場にうずくまる


「!!吹雪、大丈夫か!?

無理するな…」


「へ、平気…大丈夫だから…」






はしぞろえ はしぞろえ

御簾に映った 唐衣…





その時


屋敷の奥深くから
わらべうたのような
不思議な歌が聞こえていた



「何だ…?

俺、ちょっと見てくる
不思議はここで待っていてくれ」



風丸がそこへ向かおうとすると

吹雪はその腕をガシリと掴み、引き止める


「…吹雪?」


「僕が行くよ…風丸君はここで待ってて…
絶対動いてはダメだよ…?」



そう言い残すと
吹雪は

まるで、何かに吸い寄せられるように

屋敷奥深くの闇へと消えて行った








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