ぶん

□お伽話は好きですか?
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俺は魔女だ




突然彼の口から出たその言葉


「魔女?何故だ
お前はこんなにも美しい…魔女なんかではない」


彼、風丸は正真正銘の男性であるが
見た目はまるで女性のよう

いや、そこら辺の女なんかよりもずっと美しく、可憐な容姿をしている





「違うよ……俺は魔女だ…姫と王子の幸せを妬み、醜い嫉妬心にとらわれる、魔女…」




彼の言う王子とは、
おそらく雷門イレブンのキャプテンであり

今、エイリア学園の野望を阻止しようと
イナズマキャラバンで仲間と共に全国を飛び回っている

円堂守…という奴のことだろう




彼…風丸も、
少し前までその中で戦っていた選手の一人だった


だが、エイリア学園との力の差に絶望し、自らそこから身を退いた



でも
それは仕方のないことだと俺は思っている

圧倒的強さのチームが次々と現れ
いつ終わるとも分からない長く苦しい戦いの日々



俺だってそんなものが続けば、きっと耐えられないだろう




「お前はよく頑張った

そんなに自らを責めるんじゃない」


「違う…違うんだ…」



お前がどんな言葉をかけても

風丸から出てくるのは
違う、という否定的な台詞だけ


「違うんだ…シャドウ、俺は、

自分からキャラバンを抜けたのに…自分の意識で逃げ出したのに…

今は、未だに戦い続けてるアイツらに、嫉妬してるんだ…羨ましいって思ってるんだ…」


何でこんなに我が儘なんだろうな、俺


そう言って、自嘲的に笑う彼が


今にも
硝子のようにバラバラに砕け散ってしまいそうで、


思わず俺は

彼の体をギュッと抱き締めた




サッカーをやるには
若干細くて力を込めれば折れてしまいそうなほど弱々しい


「…シャドウ…俺…悔しいよ…」


目からポロポロと涙を流しながら、
風丸も俺の背中に腕をまわす



「お前は俺が守る…」



それだけ言って

俺は風丸の体を少し離し、

自分の唇を彼の唇に重ねる




焦点が合わなくなるほど近くで見た

彼の顔は、闇に落ちてもなお
美しかった





暗い闇にその身を染め、紫色の光に照らされた月のような姫君と


太陽のように一点の陰りもない心を持つ王子




俺は彼が、太陽の光に消えてしまわぬように

ずっとそばで守りつづけると誓う







姫と王子は敵対し、姫は騎士と結ばれる


世にも珍しいお伽話の始まり始まり










END




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