ぶん

□初恋は君
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走るたびにヒラヒラと揺れる水色の髪

茶褐色の大きな瞳

まるで女の子のように整った顔立ち



『風丸って美人だよな〜』

『男にしとくの勿体無いよな』


クラスのやつが喋っていた言葉が頭をよぎる



幼なじみで昔からくっついて遊んだりしていた
自分にとっては、そんなこと全然気にならなかった

ただ、大切な友達として、幼なじみとして風丸が大好きだった





でも、そのクラスでの会話を聞いて
風丸を少し意識して眺めてみると

なんだかそれだけじゃないような気がした

じっと見つめていると
その視線に気づいたのか風丸も俺の方を見て
「どうかしたのか?」なんて聞いてくる


至近距離でこちらを見つめ返してくる視線にドキドキする

前はこれぐらい何てことなかったのに

何でもない、と返すと
そうか、と言ってまたスタスタとフィールドに戻って行く


そんな後ろ姿を見つめ、ハァと溜め息をつく



一体どうしたんだ俺は


そんな事を考えていた俺は
シュートが自分に向かって飛んできたことに気づかず
顔面にそれをくらって
そこで意識がプツンと途絶えた



……………………



どれくらいたっただろう


ハッと目を覚ますと
目の前には白い天井

息を吸うと自然と香ってくる薬品の匂いに
ここが保健室だということがわかった
「あ、気がついたか?!」

声がした方に首を動かせばそこには気を失う直前まで考えていた人物が
俺の顔を覗き込んでいた


「あ…風、丸…?」

「びっくりしたよ…お前練習中に豪炎寺のシュート、顔面で受けて気絶したんだぜ?」


練習に集中できないなんてお前らしくないな、なんて言いながら心配そうな笑みを浮かべる風丸

そんな表情も綺麗だと思ってしまった俺は
本当にどうしたんだろう


「何か悩み事か?俺でよければ相談に乗るぜ?」

そう言ってくれるが
さすがに、お前のこと考えてたなんて言えない


「いや〜…、実はさ、なんか最近ちょっと気になるヤツがいて、気づいたらしょっちゅうそいつのこと考えちゃってさ…
どうしたんだろうな、俺」


敢えて名前を伏せて言ってみた

そうすると風丸は少し驚いた顔をしてこう言った


「ってことは円堂、お前その子のことが好きなのか?」


…え?好き?


「俺はクラスのヤツもサッカー部のヤツらもみんな好きだぜ?」

「そういうのじゃなくてさ、それって恋なんじゃないかってことだよ!」

「へっ!?」


恋?あの母ちゃんが見てるドラマとかでよく出てくる?
手を繋いだり、
チューしたりする??


「へー、お前に好きな人が出来るなんて意外だなぁ」

「なんで?」

「だってお前、サッカーが恋人ってぐらいサッカー一筋なヤツだと思ってたからさ」


フフッと笑いながらそう話す風丸


「…で、誰なんだ?その気になるヤツって」

「え゛!!??」


急に振られてびっくりしたせいか
変な声が出てしまった

まさか風丸なんて言えるわけもない



誰だろうな〜、なんてはぐらかすと
何だよ、言えよ〜、と
じゃれついてくる

やっぱりドキドキしてしまう

か、顔が近い…!!



「〜///とにかく!絶対教えてやらない!!」

風丸を引き剥がしながらそう言ってやる
やべ、絶対顔赤くなってる

ちぇ、と悔しそうに俺から離れると
じゃあそろそろ練習戻るな、お前はもう少し寝とけよ!と言って保健室を出て行ってしまった






…恋

俺が、風丸に…?


風丸が行ってしまった後もその言葉が頭の中をぐるぐると回り続ける



……そういえば俺、ちっちゃい時に風丸に告白したことがあった気がする





『いっちゃん!俺、いっちゃんのこと大好き!』

『うん!僕も守のこと大好きだよ!』

『ホント!?じゃあ結婚しよ!』

『でも、結婚は男の子同士じゃできないよ?』

『そんなの関係ないもん!それにいっちゃんは女の子みたいにかわいいから大丈夫だもん!!』





小さい時はあんな恥ずかしいことも
簡単に言えてたんだなぁと

思い出しただけでも顔が赤くなるのを感じる

というか、あの頃は結婚の意味なんてまったく分からず、ただ、ずっと一緒にいたいとか、そんな気持ちだけであの告白をしていた

風丸は、まだ覚えているんだろうか

でも、さっきのあの反応では、その可能性は低いか…



そんなことを考えながら俺は消毒薬の匂いのする布団を頭から被った








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