音 楽
□虚言
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「大嫌いです」
そう言うと「何だお前」と言う瞳が向けられる。
「ずっと前から、大嫌いでした」
私を見上げる彼の眉間に皺が寄る。
「だから何だ」と目で訴えられる。
真剣な表情を崩さず、続ける。
「嫌いで嫌いで、しかたがなかったんです」
少し考えた後私の奇行の理由に気が付いた様で、呆れ顔で口を開く。
「嫌いを嘘にしても好きにはならないぞ」
目線をそらしてそう言う彼。
知ってるよ。それくらい、いくら私でも。
そんなような事を言うと、下らないと呟いて立ち上がり、部屋へ向かう。
その背中に向けて、言ってやった。
寂しがりで愛されたがリな君に、言ってやる。
「好きです」
「大好きです」
そう言い放てば止まる足。
生憎表情は見えない。
呆れているのか、馬鹿にしているのか、それとも・・・。
「でも」
これには続きがあるんですよ?
「愛してないです」
彼はまだ固まったまま。
しばらくすると何かを気にしだした。
が、私にはその何かが分からず、考えを巡らせていると彼の声が。
「 」
耳を疑った。
聞き返そうとするが呼びかける言葉を探している間に、彼はすたすたと部屋に戻って行ってしまった。
果たして今の言葉は嘘だったのだろうか。
それとも…。
「淀川ー お昼できますよー?」
半ば固まっていた思考回路に届いた声。
彼の言葉の真偽に気付くまで、後少し…
end?