音 楽
□積もる雲、散る霙
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同居人に頼まれた買い物を終えて岐路に着いた直後、曇天の空から白い雪が降り始めた。
早く帰って温まりたくて、思わず急ぎ足になる。
近所で一番品揃えが良く、値段も良心的なそのスーパーは、俺達がよく世話になる場所だ。
ただ少し距離が遠く、徒歩で片道20分くらいかかる。
速足で歩いているにもかかわらず、なんだかいつもよりうんと遅い帰宅に感じた。
ドアを開けた瞬間、部屋を間違えたかと思った。
何故か冷蔵庫を開けたかの様な冷気が身を包んだのだ。
何かあったのかと靴を脱ぎ、荷物を玄関に置き奥の部屋へ。
そこには、
開け放った窓の前、遠く遠くの空を見つめて佇んでいる同居人の姿があった。
一体何があったんだと考えるが、心当たりは無い。
そりゃあ付き合いも浅いんだし仕方がないか・・・。
ふと窓の前の人影に目を向ける。
その背中は、なんだかとても、寂しそうに見えた。
そこからはもう、自分でもどうしてそうしたか分からない。
ゆっくりと近づき、自らの帰宅を告げてそっと腰に手を回し、抱きしめた。
その体は、袢纏ごしとはいえとても冷えているのが感じられて、なんとか温めてやろうと回した腕に少し力を入れた。
しばらくすると、そっと手を握られ、その手が氷のように冷たいことに驚いた。
この人はいつからこうしていたのだろう。
そう思った直後、腕にかかる負担が急に大きくなった。
見てみると、気を失っているようだ。
自分より背の高いその体を、落としたりしないようになんとか横たえ、畳んだ布団の上にあった厚手の毛布をかけてやる。
どうやら眠ってしまったらしい。
とりあえず窓とカーテンを閉める。
暖房器具なんて無い家で、どうやってこの体を温めようかと考える。
とりあえず、押入れに閉まってある湯たんぽとさっき買ってきたカイロを取りに立ち上がった。
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