音 楽

□今晩全域アメ模様
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「Happy Halloween!」

「trick or treat!」


ドアを開けたとたん、意気揚々とお決まりの台詞を口にする子供たちに、お菓子
を渡す。
ありがとうと一礼して次に行く家を確認する姿を微笑ましく思う。
リビングのソファに座り、さあ次は誰が来るだろうと考えを巡らせていると、裏
口のドアが叩かれた。
さあ誰だろう。ドアを開ける。


・・・。
あれ?
目線の先、あるはずの頭がない。
変わりに目の前に広がるのは、赤っぽいカーディガン。

1秒ほど思考停止。

それから、ああそうかと気付いて顔を上げる。


私より大分背の高い、夜の闇に映える金の髪の男性。
目が合うとにっこりと笑い、

「Happy Halloween!」

と可愛らしい籠を差し出してきた。
受け取ると、中には綺麗にラッピングされたお菓子。

この人がここに居るという事は、今頃
我が家の金髪もあちらでお世話になっているのだろう。

じゃあねと手を振って駆けていく後ろ姿に、手を振り返す。

これは毎年の習慣だ。
「ハロウィンが子供だけの祭りだと誰が決めた」と言い始めたのがさっきの彼。
どうせお菓子は作りすぎて余ってしまうし、それならとお互いの家でお菓子交換
を始めたのがつい1、2年ほど前。

今年は何を作ったのだろうと顔がゆるむ。
私自信、彼のお菓子は好きで、毎年楽しみでたまらないのだ。





予想していたほどんどの人が来て、家に余ったお菓子の数も残りわずかとなった

そのお菓子を今渡し終えて、残り1つ。

この日を待ちわびているあの人がまだ来ていない。
今年はまた参加者が増えて、家を回るのに時間がかかるのだろう。
多分、うちが1番最後かな等と考えながら、彼を待つ。

もうすぐ日付が変わる。 
 ドアが鳴った。

開けるとそこにはお菓子のいっぱい入った袋を抱えて、息を切らしながらにっこ
りと笑う彼の姿。

「Happy Halloween!!」

元気にそう言った彼に、最後の一つを渡した。
お茶でも飲んでいくかと誘ってみると、家に帰ってすることがあると断られた。
それではまた今度にと微笑めば、彼も笑って、楽しみにしていると言って帰って
行った。

両手で袋を抱えて走っていく彼の分まで、手を振った。






日付が変わる。
1年で1番と言っていいほど忙しい日が終わった。


さて、小さな神様と約束したお茶会はいつにしよう。

そんな考えを巡らせながら、浅木の家からもらったお菓子の準備をした。










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