音 楽

□零時零分 
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同居人は全員泊まりなり何なりで出払った夜。
テレビの音も無いリビングルーム。
いつものテーブルの上にはこ洒落たボトルと2つのワイングラス。
ボトルの中身は葡萄ジュースだ。
別に僕はワインでも何でも構わないのだが、この日を共に祝う彼に合わせている。
彼は、アルコールが駄目なのだ。

御馳走も何も無い。
ただいつもの空間にいつものテーブル。それと少し洒落たジュースのボトル。
それだけ。記念すべきこの日を祝うには、それだけで充分なのだ。

僕のすべき準備がすべて終わったので、椅子に座り、まだ準備の終わっていない彼を待つ。
少しして、彼が部屋に入ってくる。
手にしていた焼き立てのクッキーを盛った皿をテーブルに置き、僕の目の前に座る。
手際良く、グラスにジュースが注がれる。
ワインみたいだ。
そう笑うと、そうですねと言って彼も笑った。

ふと前を見ると、彼と目が合った。
綺麗な赤い瞳。
何故これが気味悪がられるのか、いまだに全く分からない。
瞳を細めてふわりと笑う彼の頬はほんの少し赤く染まっていて。
つられて僕まで赤くなる。
それを誤魔化すように笑い返す。

ふたりで居る事がこんなに幸せだと。
そう思えるのは今だからだろう。
そう思えるのは僕らだからだろう。

些細な考えを巡らせ、それじゃあとグラスを持つ。
続いて彼もグラスを持った。

 おめでとう

声から少し遅れて、カチリとグラスが鳴る。



今日は僕らの生まれた日。

僕らの2度目の誕生日。



声には出さず、そっと彼に言った。





Happy Birthday
愛しい愛しい 僕の弟








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