音 楽

□或る初夏の昼下がり
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読書に耽る昼下がり。
視界にちらつく緑の物体。

けして毬藻なんて可愛らしいものではない。
とりあえず、身動きとれないし重いし暑いしもぞもぞするから落ち着かない。


淀川、頼む。寝るのは構わんからとりあえず膝の上からどいてくれないか・・・。





眠そうな目で俺の隣に座ったのが大体1時間。

そのすぐ後に「少しだけ」と言って人の膝を勝手に枕にして寝始め。

あまりによく眠るもんだから起こすに起こせないまま1時間。

足が痺れてきたのが10分くらい前。

本もこれで3周目。

いい加減飽きてきて眼下に転がる巨大毬藻に意識が向き始め。

ふわふわ癖っ毛の誘惑に負けて指を絡ませ始めたのがさっき。


もそもそと頭を撫でていると、くすぐったそうに身をよじる。
犬みてえ、とか思ってると不思議な事に、犬耳がついているように見えてくる。
きっと尻尾があったら、音が出るくらいに振ってるんだろうな。
思わず笑みがこぼれる。


うーうーと言葉になっていない声を発する唇をつまんでみると、途端に不機嫌そうになる。
流石に鼻つまんだら起きるだろうな。頬をつつくくらいで我慢してやろう。いつもの過剰スキンシップの仕返しだ。




・・・ところで。
なんでこいつは俺の方向いて寝てるんだろうか。息苦しくないのか?
がっちり腰に手回して抱きついてきやがって。
暑いから離れてほしいんだがな・・・。
まったく、気持ち良さそうに寝やがって。


「・・・アホみてえな面」


まあ、その間抜け面に免じて、後30分だけ許してやるか。
それまでに起きなかったらこのまま立ち上がってやろう。





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