..Y another story..

□観察日記 其の一
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十月某日




南野君を観察してみた。






朝、席へ着くなり本を開く。


どれだけ本が好きなんだ。
――というより、他にすることがないからなのか。



何の本を読んでいるのかは分からない。
丁寧にカバーがかけられていた。



多分、私が貸した本、かな?





その後、教師が来るまで本を読み耽る。





一限目 小論文の授業



ふと隣を見た。

この男、頬杖ついてぼーっとしてるよ。

さては、内容を纏めるのに時間がかかっているな。


どれどれ、とこっそり彼の用紙を盗み見た。

一文字も書いてなかったら、あとで笑ってやろう。


――と思ったのに。


白紙どころか、文字で埋め尽くされて真っ黒でした。



……憎たらしい奴め。







二限目 私の嫌いな数学



駄目だ、頭が痛い。

数字を見るだけで気分が悪くなる。



次の問題、私だ。当てられても答えられない。



こういう時は。



「ねえ、次の問題の答え、教えて」


小声で隣の彼に囁いてみた。


私だって、この男から教わるなんて不本意だ。
だってなんか、ムカつくから。



南野君は、呆れ顔で私を見た。


答えだけ訊くな、自分で考えろだって。


…酷いと思いませんか。


皆にはいつも優しく教えるくせに。何、この差。



いいじゃないそれぐらいって言い返そうとしたら、……ほら当てられた。



まずい、さっぱり解らない。

…取りあえず、適当に答えるしかない。



「2.5」



囁くような声が隣からした。

やっぱり南野君だ。
いざとなれば見捨てないのね。優しいっ。



心の中で彼に感謝して、「2.5」って自信満々に答えたんだけど…。



「違うぞ、5.2だ。ちゃんと説明訊いてたか?」



まさか。



恐る恐る蔵馬に視線をやると…



舌出してやがった。



ムカつく!!



絶対にわざとだ。それ以外に何もない。この男がこれしきの問題で間違えるわけがない。



私の睨みも何のその。





――…嗚呼、憎たらしい。




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