書きだめ

オチがなかったり、凄く短い話を置く物置場
たまにパロディとかも
◆月のワルツ風味 

月のワルツ

暗い小道の隅に薄汚れた男が座っていた。
男の前にはテーブル代わりに形が歪になっている厚紙の箱がある。箱の上にはガラクタが乗っていた。

いつもならばこういう類の人には目もくれずに通り去ってしまうのだが、今日はなんだか心に引っ掛かった。

ガラクタの一つに目を奪われたのだ。
ついにはガラクタの乗った箱の前にしゃがみ込んでそれを眺めてしまった。
そうしていたら対向の男の顔がちらりと見える。

こちらを静かに見つめてくる男、その瞳にハッとした。一瞬あの人に見えてしまったのだ。
不思議な魅力を宿した瞳が、あの人にとてもよく似ている。
だがあの人ではない。
慌てて視線をガラクタに戻す。

カチカチとガラクタの中の時計が鳴る。

2016/01/21(Thu) 13:27 

◆no title 


「ねぇ、ボス…僕のこと愛してる?」

情事の香りが未だ色濃く残っているにも関わらずすでに身だしなみを整えた彼に聞いた。

「まぁね」

ベッドでシーツを纏うだけの僕に視線を向けると彼は素っ気なく返してきた。
その返事が気に食わなかった訳ではないが、ちょっと意地悪が出てしまった。

「それはファミリーとして?」

意地悪く笑む僕に険しい顔をして彼は何も答えなかった。彼は無言のままベッドの縁に腰を下ろした。

愛の言葉なんて欲しい訳じゃない。
決して僕の愛は揺らがない。


僕から見える彼の背中はとても小さい。

2016/01/21(Thu) 13:25 

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