01/21の日記

12:12
同じ瞳(め)をした違う人
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「貴方は不思議な目をしていますね」

穏やかな笑みと共にそんな言葉を掛けられた。そんな言葉を吐いた人物はなんとも不思議なオッドアイである。

目の前の人物に嫌味はないだろう。そして深い意味はないのだ。
飄々としたよく読めない男なのだ。
それを知っているので彼は本意でそう言ったのだろうと推測し、言葉を返した。

「それは…ありがとうございます」

「いえいえ、本当にそう思ったのです」

やはり、違う。
オッドアイの青年六道骸は思った。
自分の知っている人と返しがこうも違うことに可笑しさを感じ少し笑ってしまった。
きっとあの人なら、それは口説きか?と不機嫌そうに呆れた口調で言うだろう。
じっと目の前の少年を見つめる。
少年は落ち着かない様でそわそわとしている。

「あ、あの…?」

目の前の少年は自身の慕うあの人に風貌がそっくりそのままなのだ。

もちろんそれは目の前の少年があの人自身であるからだ。10年バズーカで入れ替わったのだ。
いや、厳密に言えば
マフィアの事など一切知らない。力さえも封印され、一般人として生活してきた世界の沢田綱吉だ。
つまりは六道骸の知る今の沢田綱吉とパラレルワールドの知らない沢田綱吉が入れ替わったのだ。

最初入れ替わった時は彼のいつもの反応ではないものでとても面白かった。
彼もあんな風に慌てるのだろうか疑問に思うほどに騒いでいたのだ。


今の六道骸の知る沢田綱吉も、この沢田綱吉のように元は純真だったらしいが幼い頃からの生活が若干違うと記憶している

「しかし…全然戻りませんね…」

沢田綱吉は口を開いた。
未だに緊張しているのだろう。
口調も固い。
(六道骸にとっての)普段の姿からは想像もできない態度に笑いを堪えることができなくてつい表に出してしまう。

「クフフ…そうですね…故障でもしているのでしょうか?」

バズーカで入れ替わってからもはや1時間が経過していた。

「まぁ、なんとかなるでしょう」

「そ、そんな!本当に大丈夫ですか?」

僕の発言に慌てて思わず席を立つ彼が面白くまた笑ってしまう。すると彼は笑い事じゃないですよ!?と大きなリアクションをする。

「本当面白いですね」

(オレをからかって楽しんでるよ…絶対…)

僕の言葉に脱力しながら席に着いた沢田綱吉は僕の方をちらりと見て、また困ったような怯えている様な顔をする。

不安そうに揺れる瞳の中の光はあの人と変わらない。

「…未来のオレってどんな感じですか?」

優しげな口調も穏やかな瞳も同じだ。

「貴方と変わらないですよ」






「おかえりなさい、ボス」

あの後すぐに沢田綱吉は元の場所に戻り、ボスは先程までいた沢田綱吉の席に帰ってきた。

「ただいま、骸」

唇だけで笑みをつくり、穏やかな瞳でこちらを見た。


「貴方は貴方ですね」

いかに同じ瞳でも、僕の沢田綱吉ではないのだから。

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