Novella

□それはそれは美しい炎を見たんだ
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私が彼を見たのは、それはそれは綺麗な満月の晩でした。闇が支配する空間に
闇の王冠を被り、空を支配する王に出会ったのです。

「ふふ…迷子か?」

やや高いが良く通るいい声で、私は彼に声を掛けられました。

「ボス…っ」

銀の人が私と彼の間に距離を取ろうとしたが、彼は静かで有りながら逆らえない雰囲気で、銀の人を制した。


「隼人…構わないよ」

クスと艶やかに微笑む彼に私は、不思議な魅力を感じて惹かれていきました。

「きみはどこから来たんだ?」

優しい声音。
細く白い繊細な指先で私の頬を、触れるか触れないかくらいの所で撫で、強い意志を持った其の琥珀の瞳を細めました。
あまりの事に私は声も身体も震えてしまいました。

「おやおや…困ったねぇ」


その様子を見ていた彼は、口端を緩やかに上げ、言っている事とは逆に、余裕な口調で、私を優しく諭してくれました。


「でも大丈夫。きみの仲間が教えてくれたから」

スゥ
琥珀の瞳が氷の様に冷たい色に変わったのです。

すると
彼に灯った、それはそれは美しい炎が
私の身を優しく包んでいくのです。

「安心してゆっくりお休み…」

彼の冷たく凍てついた瞳に射ぬかれながら、私は眠りました。



「お疲れさまです…ボス」

暗殺者の始末を終えて、彼はベッドに寝転んだ

「あぁ…ありがとう…」

彼は一言いい、隼人に下がるように視線をむけた

「それでは、ゆっくりお休みなさい」

パタン

「…やはり…慣れないよ…」

彼は涙を一粒流し、眠りについた。
あの時の暗殺者の穏やかな死の顔を思い出しながら。彼は何度も、涙を流す。





fin

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