サモン小説

□リリィ
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女、とは本当に不思議な存在だと思う。



惜し気もなく笑顔を振り撒いていると思えば、


意味もなく深刻な表情を浮かべ、



何かと大雑把だと思わされていたら、



なにやらいつもと違った雰囲気を醸し出していて‥‥‥‥





「‥‥さん‥‥ヴァリラさん」



「‥‥‥‥っあぁ、なんだ、ケノン?」



「‥‥‥また、見ていましたね」



ニヤリ、と控え目に微笑むケノンに、不覚にも顔が熱くなってしまったのを感じた。




「‥‥‥たまたま目につく位置にいただけだ‥‥」


「はい。そういうことにしておきます」




コイツ‥‥‥日に日に良い性格になっていっている気がする‥‥‥。




「ケノン‥‥‥」


「なんですか?ヴァリラさん」



「‥‥‥‘おんな’とは不思議な生き物だな。
俺には理解できそうにもない」



「‥‥‥‥‥‥‥‥‥まさかアナタからそんな言葉を聞く日がくるなんて思ってもいませんでした…」



「他に答え方はないのか」



「‥‥‥たしかに、女心と秋の空、と言いますからね。
男には理解しにくい部分もありますよ」



「‥‥‥理解、か」




ふぅ、とため息をついてもう一度視線を戻すと、




「‥‥‥ッ!」




アイツと目が合ってしまった。





アイツは至極嬉しそうな顔をすると、俺の名前を呼びながら手を振ってくる。






―…あの笑顔を見るたびに感じるこの感覚はなんなのだろう。




前とは違った意識をしてしまい、


そのせいか言葉も上手く出てこない。


自然と目線も反らしてしまうし、


なのに瞳はアイツの姿を追ってしまうなんて…―






「‥‥‥ケノン」


「はい。なんですか?」


「‥‥‥やはり、まだ理解できそうにもないが…」




このままでは釈然としない。





「わからないままで終わるつもりも、毛頭ない」






そう言って俺は、一歩踏み出した。



俺を悩ます唯一無二の‘女’がいる場所へ。









後日、理解したが為に更にその存在に悩まされるとも知らずに。




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