サモン小説

□昔の話.今のボク達
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ラショウは小さく息をつくと、静かな調子で語り始めた。


今はもう忘れ去られた鬼と人間の


相容れない昔話を







―…そもそも節分ってのはな、人間の娘を好きになっちまった鬼の話なんだよ。



鬼は娘に心底惚れて、どうにか娘を嫁にしたくて娘の家に行ったんだが



人間にとっちゃぁ鬼はバケモンだ。




そんなバケモンに娘を持ってかれてたまるかっ、てな。

人間は悪知恵働かせんだよ。





炒った豆を鬼に渡して

「ソレを植えて芽が出たら娘を嫁にくれてやる」って言いやがった。





バカみてぇだろ。

そんなもん守る気なんて人間にはハナッからなかったんだ。


一生芽が出るわけねぇからな、炒った豆なんてよ。



それでも鬼は信じた。

人間との約束を。




そいつも普通気付くだろーによ。





一年経っても芽が出ねぇから、また人間の所へ行って豆をもらってまた植える‥‥‥


何度も何度も、同じコトを繰り返した。



それで何年も過ぎちまった。





結局、芽は出ねぇし娘は手に入らねぇしで鬼は山奥に閉じ籠っちまったんだ。





それからだ。



鬼に炒った豆を投げれば逃げていく、なんて話になったのはよ。





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