春色の軌跡

□26 行動するか否か
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「偉そうに額当てまでして、忍者気取りか……。だがな、本当の忍者ってのは、いくつもの死線を超えた者のことを言うんだよ。つまり……オレ様の手配書にのる程度になって、初めて忍者と呼べる。お前らみたいのは忍者とは呼ばねぇ……」
そう言って、分身の再不斬はナルトを蹴り飛ばしに来た。蹴りなら死ぬことはないだろう……と思ったが、私はナルトを庇うように前に出て、刀で再不斬を受け止めた。動けるのに何もしないで、仲間が傷つくのは嫌だからね。でも、私が手出ししない方が、原作通りになって、ナルトの成長に繋がるのかな。

「……ぐっ」
蹴りを受け止めたつもりだが、踏ん張りが足らず、後ろにナルト共々吹き飛ばされてしまった。空中でナルトをキャッチして体勢を立て直し、着地した瞬間に地を蹴ることで、タズナさんやみんながいるもとの場所に戻った。抱えてたナルトをゆっくりと降ろした。
「ナルト、大丈夫?酔ってない?」
ナルトは私がここまで動けると思っていなかったのか、それとも何が起きたのか理解していないのか、パチクリと目を見開いていた。
「ほぅ……少しは骨のあるやつがいるようだが……所詮、ただのガキどもだ」
飛ばされたときに落ちたナルトの額当てを、再不斬は踏みつけた。

「お前ら!タズナさんを連れて早く逃げるんだ!!コイツとやっても勝ち目はない!!オレをこの水牢に閉じ込めている限り、こいつはここから動けない!水分身も本体からある程度離れれば使えないはずだ!とにかく今は逃げろ!!」
……どうする!?これが原作の流れなら、このまま様子を見たほうがいい。だけど、そうじゃないのならば……、私が、再不斬と戦う?後ろの4人を守りながら……?正直、自信がない。1対1でも危険なのに、4人を守りながら戦いきれる自信がない。
じゃあカカシさんの指示通り、みんなで逃げるべきか。でも、離れれば水分身が消えるといっても、その距離まで一般人のタズナさんを連れて、再不斬から逃げ切れるだろうか?
クロを口寄せして、みんなを運んでもらう……?それでも、追いつかれそうだな。

「……私があいつと戦うから、みんなはタズナさん連れて逃げて」
みんなで逃げるのではなく、みんなは逃がして、私が再不斬と1対1で戦う。これが、一番みんなの生存率が高くなるのではないだろうか。その場合、再不斬との戦いに備えて、クロは残しておきたい。

でも、もしこれが原作の流れ通りであれば……。

「うおおおお!!!」
恐怖で震えて、この場を離れようとしたナルトが、再不斬に向かって走っていった。
正直言って、カカシさんでも手こずる相手に、ナルトたちの勝ち目はない。絶望的な状況だ。
――でも、私は、ナルトがこの世界の主人公だと知っている。そして何より……、

再不斬は抜刀する様子がなかったので、私はなにもせずナルトの行動を見守った。
ナルトは再不斬に蹴り飛ばされ、血を流したが、左手には、さきほどまで再不斬が踏みつけていたナルトの額当てがあった。

「おい……そこの眉無し。お前の手配書に新しく載せとけ!いずれ木の葉隠れの火影になる男――木の葉流忍者!うずまきナルトってな!!!」

――そして何より、私は、学友としての、ナルトをよく知っている。
絶望的な状況でも、原作の流れと同じだからだとか、同じじゃなくても「主人公」だから、大丈夫、とかではない。
アカデミーで同じ時間を過ごしてきた、私の知るナルトであれば、このような状況でも打破してくれるんじゃないか。って、少し、ワクワクしてしまう。

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