春色の軌跡

□25 死亡フラグは嫌
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火の国の港の外れから、木の小舟に乗って東へ数時間。深い霧に隠れながら手漕ぎで進み、ようやく、小さな島々の集まりである波の国に到着しました。

タズナさんの依頼の正式な内容は、海運会社のガトーカンパニーからの護衛だった。
タズナさん達はかねてから島を繋ぐ巨大な橋を建設していた。しかし、ガトーカンパニーがここ1年で波の国の交通を乗っ取ったので、タズナさん達が作ろうとしている橋が邪魔になり、橋の造り手達を始末しているそうだ。ガトーカンパニーはギャングや忍を雇って、麻薬の売買など悪どい事業を拡大しているらしい。

本来であればBランク以上の任務だが、波の国は大変貧しく、タズナさん達もお金が出せなかったとのこと。依頼内容の偽りが判明した段階で、依頼は断るべきだろうが、そこは、ほら……みんな優しいから依頼続行の流れになりました。

マングローブ林を横目に古びた桟橋に上陸し、小舟を漕いでいた案内役の人と別れた。
海の上に建つ小さな木造家屋たち。お世辞にも小奇麗な町とは言えず、確かに、経済状態はよくなさそう。しかし、町中の建物とは対象的に、建設中の石畳の橋は、とても巨大で圧巻だった。彼らの本気度が伺い知れる。タズナさん達は、この橋のことを希望の橋だと言っていた。インフラが整えば、経済状況はよくなるだろうからねぇ。
まーでも、この橋にかけるお金をもーちょい依頼に回してくれたらいいのに!

タズナさんの家は、町外れにあるようなので、林の中をしばらく移動することになりました。林といっても、海底に根付いて、海からひょっこり顔を出しているマングローブ林ではなく、普通に乾いた大地に根付いている林のことね。

次襲われるとしたら、こういうとこだろうなぁ。小舟も危険ではあったけど、霧に隠れていたし、敵からしても、どこの経路で来るか予想しにくいだろうし。一方で、タズナさんの家は割れているだろうし、待ち伏せしやすい。はず。タズナさんも、家族ごと住処を変えて避難すればいいのに。

妙に張り切っているナルトが、周囲に敵がいないかキョロキョロしている。火の国を出る前に、サスケにいいところを見せつけられたから、悔しいんだろうなぁ。

何か気配を感じたらしいナルトは、茂みに手裏剣を投げ込んだ。しかし何も居なかった。
また気配を感じたナルトは、茂みに手裏剣を投げ込んだ。かわいいウサギが失神していました。

……おかしいな、2度めは確かに私もその位置に気配を感じたんだけど。変わり身の術??
落ち着いて1つ息を吐き、意識を研ぎ澄ませたら、左後方の木の上に微かな人の気配を感じた。移動したの、かな。
普通の聴覚では、全く移動音が聞こえなかった。かなりの手練な気がする。警戒レベルを引き上げて、五感を研ぎ澄ましておこう。
カカシさんも気がついているだろうから、大丈夫だろうけど……。

「全員ふせろ!!」
敵の殺気を感じた瞬間、カカシさんが的確に指示を出した。こういうところ、さすがだなと思う。私なら危ない!とか避けて!とか言っちゃいそう。瞬時にどうやれば敵の攻撃を避けられるのか判断して、他人に指示を出せるのはすごい。私は行動には出るけど、即座に他人に指示する言葉までは出ないや。

でもタズナさんは押し倒して守ったよ!!私が一番タズナさんに近い位置にいたからね!
巨大な剣が頭上を通り過ぎ、ガタイの良いお兄さんが現れた。目つき悪……!

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