春色の軌跡

□ 22 皆で鈴取り合戦
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悪びれる様子もなく、集合時間よりも遅れてカカシさんはやってきた。

カカシさんは丸太の上に、12時に目覚しをセットした時計を置いた。そして、懐から、紐のついた鈴を2つ取り出した。
「これを俺から昼までに奪い取ることが課題だ」

あー、なるほど。単純な戦闘だったら、上忍相手に勝ち目がない。でも、鈴を奪うだけなら、いくらかやりようはある。
……と、一瞬考えてしまうが、どちらにせよ、かなり難しいと思う。

「もし昼までに俺から鈴を奪えなかった奴は、昼飯抜き!あの丸太に縛り付けた上に、目の前で俺が弁当を食うから」

って、……朝飯抜いて来いって、このため!?
ばっちり食べて来たけど。

「鈴は1人1つでいい。2つしかないから……必然的に2人丸太行きになる」

まぁ、1食や1日食べらられなくたって平気だ。旅してて、なかなか食材が採れなかったことなんか何度もあるし。空腹を我慢して動くことなんて慣れっこだ。……あ、でも今世ではそんな経験したことないから、やっぱり無理かもしれない。
けど、我慢できなかったら、天使化すれば良い。天使の体は、あらゆる感覚をオフにすることができるから。食事や睡眠を不要な体にすることができる。最終手段だけど。


「……で!鈴を取れないやつは任務失敗ってことで失格だ!つまり、この中で最低でも2人は学校へ戻ってもらうことになるわけだ……」
神妙な面持ちで告げられたその言葉によって、空気が張り詰められた。
原作では、誰か鈴取れたっけ?鈴の行方は忘れてしまったが、原作では全員無事に合格して下忍になっていたから、さっきのルールは単なるハッタリだと分かる。

せっかくチームを組んだのだから、誰かだけ落とす、なんてことはしないだろう。……いや、私は結果を知っているからそう思うだけで、本当に、鈴の取れない人は落とすつもりだったのかも。たまたま、主役達が良い動きをしたから、カカシさんが合格にしただけかも。

「手裏剣も使っていいぞ。俺を殺すつもりで来ないと取れないからな」
「でも!危ないわよ先生!!」
「そうそう!黒板消しも避けれねーほど鈍くせーのに!本当に殺しちまうってばよ!」
「世間じゃさぁ……実力のない奴にかぎって吠えたがる。ま……ドベはほっといて、よーいスタートの合図で……」
”ドベ”の言葉にイラッとしたナルトは、クナイホルダーに手を伸ばしてクナイを取り出し、構え、カカシさんに投げようとした。その手付きに無駄な動作はなかった。しかし、構えたクナイは投げられることがなく、ナルトの首筋に添えられていた。ナルトの後ろに素早く移動したカカシさんの手によって、ナルトの腕ごとナルトの首筋に沿うように固定されていたのだ。

「そう慌てんなよ。まだスタートは言ってないだろ」

ナルトの動きに無駄はなかった。ただそれ以上に、カカシさんの素早さが尋常ではないのだ。

「でも、ま……俺を殺るつもりで来る気になったようだな……やっと俺を認めてくれたかな?」

のんび〜りとしたカカシさんを油断しまくっていた3人の表情が変わり、真剣な眼差しになった。

「ククク……なんだかな。やっとお前らを好きになれそうだ……」

そして、カカシさんによって演習の開始が告げられた。

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