春色の軌跡

□19 無気力が超加速
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あれからと言うものの、サスケとは学校で毎日のように会うのだが、全くもって目が合わない。
サスケとすれ違う時、私は気まずさを感じつつもサスケの方を見るのだが、彼の視線は全くもって動かない。私は完全に居ないものとして扱われている。だから私も、今はもうサスケを見ることはない。
まぁ彼は別に私に対してだけではなく、誰に対してもそんな感じになってしまっているのだけれども。本当に孤立してしまっているのだ。

あ、ナルト君に対してだけは違うかな。ナルト君は、春野サクラちゃんのことが好きで、春野さんはサスケのことが好き。そのため、ナルト君だけは、サスケに対してムカつきながらも真っ直ぐ向かっている。原作通りだ。他のみんなは、近寄りがたいサスケを避けていると言うのに。私もだが。

自分に対して向かってくるナルト君を、サスケは全く相手にしていないように見えて、それでも彼の視界には入っている。サスケのことは君に任せたよ、ナルト。



空が綺麗だなぁ……。
「何だかやる気が出ない……」
ボーッと毎日をただ過ごしていることに変わりはないが、前よりも更に淡々と日々をこなすだけになってしまった。

生活をしていても家族は誰も居ないし、友達もヒナタくらいだ。あとは修行する時にヨシノに会うぐらい。だから、人と話すことがほとんどない。
旅にでも出ていたなら、人と会話していなくても刺激のある人生になって楽しんでいただろうけれども。前世のように。
本当に最近、何もないので、無感情で日々を過ごしてしまっている。
身の振り方を考えなきゃいけないって思ったのは事実だが、そう簡単に人間は変わらんよ。眠。

シダレさんと戦って、私の弱さを痛感したし、もっと心を入れ替えて修行を積まなきゃいけないんだろうけど……。ああ、何のやる気も出ない。

「おっ。お前もサボりかよ」
「ああ……えーっと、奈良シカマル君」
安寧のサボりの地である屋上にやって来たのは、クラスメイトの奈良シカマル君だった。初めて話した。
「シカマルでいい。めんどくせーし」
「……シカマル、サボりは良くないよ」
「お前にだけは言われたくねぇ……」
そう言って大きく息を吐いた彼。
「昔からよくサボってるだろ?このままじゃ進級危なくねーか?」
「えっ、嘘」
「まぁお前はそこそこ成績良いみたいだし、大丈夫か……」
私がサボリマンであることは有名なのだろうか……。もう少し真面目にアカデミーに来ようかな。うん。



と、心に軽く誓ったのにも関わらず、今日もとっくにアカデミーの始まる時間を過ぎてしまった。
ここに来ると、時間の感覚が分からなくなってしまう。

「庭の紫苑が綺麗に咲いたよ」
ほぼ毎朝、ここに来てしまう。かけるべき言葉も、言えないでいるのに。

「お姉ちゃん……」

私はただ、何も言うことができず、墓標を見つめるだけだ。
家族を大切にしていると、愛していたのだと、そう思い込みたいのだろうか。家族の眠るこの墓地に、足繁く通っている。

「あっ、」
風が強く吹いて、庭から摘んだ色とりどりの花束が数本飛んでしまった。
少し離れたところで佇んでいた人が、それに気づいて拾ってくれた。墓石がたくさん建っている墓地だから、よくいろんな人がここにいる。

「はい。綺麗な花だね」
「ありがとうございます」

その中でもこの人は、私のようによくここに来ている。と思う。よく顔を見るのだ。言葉を交わしたのは初めてだが。

「君、よくここにいるよね。アカデミー生?」
どうやら向こうにも顔を覚えられていたようだった。
「はい。お兄さんも、忍ですよね」
忍装束を着ているし、戦闘に長けた人の立ち振る舞いをしている。上忍かな?
「そうだよ。ああ、ミヤマさんの娘さんか」
「父とお知り合いですか?」
私がお参りしていた墓石を見た彼は、父の名前を出した。墓石に家名が彫られているからね。
「よく、任務でお世話になっていたよ。君の兄とも一緒に戦ったことがある」
「そうですか……」
私も、彼がいつも見つめている墓石を確認した。"のはら"と書かれたその墓石は、とても綺麗に掃除されていた。
そう言えばこのお兄さん、慰霊碑の前にもよく居る気がする。こことは別の場所、演習場として使われているらしい広場に、慰霊碑が建っている。私が産まれる1年ほど前に終わった戦争の慰霊碑だ。戦争で亡くなった忍達の名前が刻まれている。私の一族で亡くなった人の名前もたくさん書かれているから、よくお参りに行くんだよね。ほら、私って今は一応当主だし。神子だし。

「……ところで、アカデミー、とっくに始まってるけど」
「…………」
「まぁ、サボりはほどほどにね」
じゃあ、またどこかで会うかもね。と最後に言って、その人は去っていった。
黒いマスクで口元と片目が隠れている忍。私も、またどこかで再会するような気がした。

まぁ、またここで何度も顔を合わせることになるのだが。

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