春色の軌跡

□18 交錯する気持ち
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「しっかし、シダレさんが里抜けするとは思わなかったな……」
伝えることだけ伝えて、ウツギは帰っていった。ウツギはシダレさんのこと、慕ってそうだったからなぁ。仲が良いってわけではなかったけど、とても尊敬していたと思う。忍としての実力は申し分ない兄貴だったし。

その後、お医者さんが来て診察された。ひどい創傷だったわりには既に完治しかけていたので、とても驚かれた。治癒術なしでも、エクスフィアで自然治癒能力が高められているから大丈夫なのさ。背中にクナイいっぱい刺さって、胸切られて、腹も貫通したけど。容赦ねぇな。
トドメを刺されなかっただけマシか。それとも、放っておけば死ぬと思っていたのか。詰めが甘い。
それでももう少し入院してけってお医者さんに言われたが、なんとかお断りした。治癒術使ったらすぐに綺麗に治るし。
この世界にも医療忍術はあるけど、医療忍術を受けれるのは、任務で大きな怪我を負った忍だけだ。私はまだ一般人だし、民間の病院には医療忍術を使えるようなお医者さんは居ない。

帰りの身支度をしていると、意外な来訪者が現れた。
「三代目……!どうしてこのようなところに!」
やばい!なんで!?初めて会話を交わすぞ!
「調子はどうじゃ?」
なんとも気さくに話しかけてくださったのは、木の葉の里の長、三代目火影の猿飛ヒルゼン様だった。

彼は私を気遣う言葉を述べた後に、本題に入った。どうやらあの夜の出来事の事情聴取をしに来たようだった。三代目自ら赴かれるとは……。

あの晩は、たまたま2人に遭遇し、様子がおかしかったので問い詰め、真意を知り、シダレさんと交戦した。そして敗れたことを伝えた。
本当は最初から事件が起こることを知ってたんだけどね!

私の回答は、三代目としても想像通りといった感じであった。私も共謀者だと疑われていないか心配だったけど。まぁ疑われていたら、手なり足なり拘束されていただろうな。

ちなみに、うちは一族を直接手にかけたのはイタチさんだけだったそうだ。シダレさんは、うちは一族を殲滅させるための手助けとして、逃げられない・邪魔が入らないように足止めする結界を貼り、部外者に察知されないように結界内の音が漏れないようにしていたらしいとのこと。そう言えばシダレさん昨日そんな感じのこと言ってたな。
そして2人とも見事ビンゴブック入り。あー、身内が犯罪者であらゆる国から命を狙われるって、何だか変な感じだな……。

曲がりなりにも実の兄に殺されかけたので、三代目からは、疑われるどころか格別なご恩情を頂いた。ありがたいが、そこまで気落ちしていないから大丈夫だよ!

身内や友人だとしても、志が違えば、刃を交わすこともあるだろう。殺されそうになったのも仕方がないし、覚悟の上で私は彼らに挑んだ。
でも……、

「あの言葉は……ちょっと胸にくるものがあったな」

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