春色の軌跡

□18 交錯する気持ち
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「あれ……」
人の気配を感じて目が覚めた。ここどこだっけ。そう思って当たりを見回すと、白を基調とした清潔感溢れるお部屋と、腕に繋がれている点滴を確認したので、病院だということが分かった。

なぁんだ。病院か。安心した。

そう思って、再び目を閉じると……、

「おい」
「………………」
「さっき目が合っただろ!寝んな!」

少し離れたところで本を読んでいた男が近づいて来て、ベッドの横で止まった。と思ったら頭を叩かれたので、仕方なく目を開く。

「あの、怪我人なんですけど……」
「だから見舞いに来たんだろが」
「え、珍しい」

どういう風の吹き回しか。
私が目を覚ますのをおそらく待っていたのは、従兄妹の木乃花ウツギだった。

「長老達が、代表して見舞いに行けってうるさくてな」
やれやれ、と肩をすくめるウツギ。
長老とは、木乃花一族の長老のことだ。あー、イタチさんやシダレさんのことは、もう一族にも、里中にも知れ渡っているのかな。
「なるほどねぇ……。それにしてもーー久しぶりだね」

ウツギは、私の2つ年上の従兄妹だ。私の母の双子の妹の、息子。
今は10歳のはず。……アカデミー生かな?飛び級して下忍になったのかな?ここ3年ほど、付き合いが全くなかったので不明だ。

「今の私なら殺せるかもよ?」

彼、ウツギは私のことを憎んでいる。きっと、誰よりも。

「……お前の兄貴にぶっ殺されるからやめとくわ」
「その兄貴に殺されそうになったんだけど……」
残念でした。ウツギが考えているような妹想いの兄貴ではないですよーだ。

「そういや、今どういった状況なの?」
「昨日の夜、シダレさんとうちはイタチは、うちは一族を虐殺後に里抜けした」
やっぱりか……。なにも、止められなかったな。ってか、今夕方っぽいし、丸一日近く寝てたのか。
「……サスケ君は?」
「無事だ。うちはで唯一生き残ってる。そいつもここに入院してる」
「良かった」
「……ところで、長老たちからの伝言を預かってる」
「うん?」
私のお見舞じゃなくて、そっちが主目的か。
「最終判断は当主のお前がすればいいが、長老達としては、里抜けしたシダレは見つけ次第殺せよとのことだ。まぁビンゴブックにも載るだろうしなぁ」
「うわぁ……無理」
ボコボコにされたんだけど。

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