春色の軌跡

□16 予兆と歯がゆさ
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イタチさんが自身の言動について土下座して謝り、お父さんの一言もあってこの騒動は落ち着いた。でもうちはシスイさんの件について、イタチさんは知らないそうだ。

「……イタチさん」
「ヤエ……か」
塀をよじ登り、イタチさんが腰掛けている縁側へと歩み寄った。不法侵入?いいえ、たまにこうやって遊びに来てるから大丈夫!縁側にイタチさんかサスケ君がいる時にはね!

「さっきの、見ていたんだろう」
「イタチさんは……何をしようとしているんですか?」
この問いにイタチさんは、少し目線を伏せた。
違う。私が聞きたいのはこれじゃない。この答えを、私は知っている。
「やめることは、できないんですか?」
イタチさんとは、それなりに長い付き合いだ。彼が何の理由もなく一族の命を奪う人だとは思えない。だけど、一族を殺す正当な理由など私には思い浮かばない。
「私には、とめられないんですか」
漫画を全て読んでいたら、イタチさんの行動の真意も分かっただろう。一族を殺さなければならない事情を消すことができたかもしれない。

もしも、特に理由などもなく、殺したいから殺すのだと、本当はそんな危ない考えの人であったり、うちは一族に何らかの恨みがあって、凶行に走ったのだとしても。原作を知っていたら、イタチさんの決心を変えられるような、かけるべき言葉だって見つけられたかもしれない。

「まるで、オレが何をするか分かっているようだな……」
そう言って遠くを見つめたイタチさんは、何も教える気はなさそうだった。

「……シダレさんが、何をするつもりか知っていますか?」
このことも、教える気はないのだろうか。
「あいつは……とてもいい兄貴だよ。オレとは違って、な……」

私が何を言っても、何をしても、この人達をとめることは不可能なのだろうか。私には知識も、力も、何もない。

「ヤエ」
「……はい」
「サスケを……いや、なんでもない」

原作では、サスケだけが生き残っていたと思うんだけど、この時のイタチさんは、迷っているみたいだった。
伏せられた顔から真意は読み取れないが、私のよく知る、普段のイタチさんの表情を思い浮かべた。とても立派なお兄さんだ。

サスケを……頼んだ、とか?
言葉の続きはわからないけれども、私にはやはり、この人が事件を起こすだなんて考えられない。
事件を起こしてほしくないし、ずっと里に居てほしい。

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