春色の軌跡
□16 予兆と歯がゆさ
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イタチさんに話を聞いてみようと、うちはの集落を訪れた。
私はどうして忘れていたのだろう。私はNARUTOで、イタチさんを見たことはなかった。名前も聞いたことはなかったと思う。それでも私は漫画を通して、イタチさんの存在は認識していた。
「……何です。皆さんお揃いで」
「昨日の会合に来なかった奴が2人いる……」
イタチさんの家の前で、イタチさんとうちはの人達が揉めていた。なんかあったのかな。と、この時はぼんやりと考え、邪魔にならないように隠れていた。
「昨夜、南賀ノ川に身投げして自殺した、うちはシスイについてだ」
その人が言うには、うちはシスイさんの遺書はあったそうだが、うちは一族の血継限界(遺伝する特殊能力みたいなもん)である写輪眼があれば筆跡のコピーなど容易いらしい。そして、このうちはシスイという人を、イタチさんは兄のように慕っていたらしい。
しかしこの2人が、昨日の会合とやらに欠席した……。
「俺を疑ってるってわけか?」
イタチさんと、詰め寄っていた3人の眼が赤くなった。これが……写輪眼……。
私には眼で追うのが精一杯な速さで、イタチさんは3人を地に這いつくばらせた。
「一族……一族……そういうあんたらは己の”器”の大きさを測り違え、俺の”器”の深さを知らぬから今そこに這いつくばっている」
「やめろ!イタチ!!」
イタチさんのお父さんだ。最近どうしたんだとイタチさんに問うお父さんに対し、イタチさんは自分の役割を果たしているだけだと答えた。
「じゃあ何故昨夜は来なかった?」
「……高みに近づくため」
イタチさんはクナイを投げ、イタチさんの家の塀に掘られたうちはのマークを刺した。
「俺の”器”は、この下らぬ一族に絶望している」
一族の紋章を傷つけるだなんて、そんなの、宣戦布告じゃないか。
私はどうして忘れていたのだろう。
私がサスケにお兄さんがいることを、漫画を読んで知っていたのは、サスケが言っていたからじゃないか。
一族を滅ぼした兄を、殺すと。
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