春色の軌跡

□10 何故か友達宣言
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火災には遭ったけど、社は無事だった。シダレさんや親族の方々が修復したのだろう。所々真新しい柱が添えられてある。……って、あ!ここは宗家の者しか入れないから、シダレさん一人でしたのかな?私も手伝ったのに……。気が回らなくてごめんよ。

「ここ、だよね……」
私は今、神様の部屋の前にいる。入るの怖い。またおいでって言われてから、二年?三年?うわああ怖い。あれ夢だったりしないよね。

「こ、こんにちは〜」
ノックしたほうが良かったかと思う中、私の視線はそのまま真っ直ぐ。お札の貼られた壺へと――、
「えっ!」
低めの台。そこには壺があった。いや、壺だったものがあった。
「割れてる……」
破片が一枚一枚、綺麗に並べてあった。シダレさんが並べたのかな……几帳面か!確かに掃除好きだった気がしないでもない。
「って、もしかして死ん……」
いや、成仏??

――勝手にわらわを殺すな。

「うあああああ!!!」

――煩いぞ。

い、生きてた!!

――何故もっと早くに来なかったの。

「ご、ごめんなさい。あの、貴女は何処にいるんですか?」

「ここじゃ」

脳内に響くような辺り一面にこだまする声。それが、ある一点に収束された。壺の、上。

巫女の、白と赤の袴を来た女性がそこに立っていた。脚は、無い……。

「お、おば、お化け……!?」
「失礼な娘よのぅ」
溜息を吐いた女性は、黒と白の両方を持つ自身の長髪を、手で払った。
「お化け等ではない」
二十代ぐらいの、綺麗な女性。

「わらわの名はヨシノ。昔に言えなかった言葉の続きじゃ」
「ヨシノ……さん。様?」
「ヨシノでよい」
「えっと、貴女は神様なんですか?」
「神?そんな大層な者ではない。お主の一族の先祖、と言ったところか」
……それって幽霊じゃん……お化けであってるじゃん……。あ、でも、
「精神体ってことですか?」
「うむ」
前世にも居たから、まぁ気にする必要は無い、か……。気になる!

「壺が割られているんですが、大丈夫ですか?」
「このくらいではわらわは死なぬ。地縛霊のようなものだからな」
……あれっ。自分で霊って言っちゃってるよこの人。

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