春色の軌跡

□07 蓄える知識と力
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家にあるたくさんの書物を読み漁った。歴史書、体術書、忍術書、様々な武器の扱い方、医学書、薬草や毒草図鑑、薬の効能等の薬学書、調合学、薬に使える蟲や動物図鑑、人体の構造……。
勉強って難しい。一つの分野を深く知ろうとするだけで、何十もの細かい分野に別れ、さらに何冊もの分厚い本がある。後半とか全部医療関係だしね……。
しかも私は、一度読んだだけで覚えるとか出来ないし、日本語久しぶりすぎて速読も出来ないし……時間がかかりすぎる。精通する為には何度も反復して読んで勉強しなきゃいけないだろうけど、同じの読むより新しいもの読む方がワクワクして楽しい。って思いから、浅く広くの薄っぺらい知識しか蓄えられていない気がする……。いやでも全ての分野の専門家になるとかは不可能だから、とりあえずたくさん読んで、興味ある分野を深く勉強すればいいかな……?って片っ端から読んでたらいつの間にかに拷問器具特集だった。

人体の構造とか前世と一緒でしょ。と思ってたら違った。この世界には、経絡系や点穴というものがあった。チャクラを体中に行き渡らせる神経に、体から出す穴。
……私にも、あるのかな?
前世は日本人で、トリップした時には私には魔術の元となるマナが無かった。この世界のチャクラと同じようなものだとしていいと思う。マナが体に無いと言うのはその世界では有り得ないことで、不審がられることもあったなぁ。で、体内で生成出来ない代わりに私は、周囲から取り込んだり、周囲のマナをそのまま操ったりして魔術を使えるようになったんだけど……。

私はこの世界で新しく生まれた。だからこの世界の道理に添って生まれた、筈……。だから、経絡系もあるし、チャクラを生み出すことが出来る……。

そう思いたいのに、思えない。
不可解な点が、二つある。

一つは、チャクラを出す点穴について。点穴は体中にあるみたいなんだけど(植物の気孔みたい)、ほとんどの人は、口、拳や手の平、足の裏からしか出せないらしい。修練を積んだり、特殊な術だったらそこ以外の体や、遠方から攻撃も出来るようになるみたいだけど。

そしてもう一つが、チャクラの性質変化について。火、風、水、雷、地、この五つがあって、これらもやっぱり口や手から出すらしい。大抵の忍は一つの系統だけで、上忍レベルになると、二つか三つ使えたりするらしい。

……私は上記の全ての属性を、体から出さずに扱える。それプラス、氷、光、闇なんてものも使える。この世界で上級魔術は試したことはないけど、下級魔術なら庭先でちょちょいっとやってみた。
元来魔術は、得意な系統はあれど、魔術の素養がある物なら八つ全ての系統を使えるし、ほとんどの魔術は自分や相手の頭上、または足元から発動するものだ。
この世界でも、それは変わらなかった。

つまり私は、この世界の理ではなく、前世の理のまま生まれて来た。
あ、ちょっと語弊がある。
私は日本人だったから、前世でトリップした世界の理には当て嵌まって無かったけど、マナを体外から吸収することで、理に適応しようとしてきた。
だから私は、この世界の理には当て嵌まらない、トリップした世界の理にも当て嵌まらない、そんな体で生まれて来たんじゃないだろうか。

まぁ魔術が使えたってことは、この世界の理を真似て、口からチャクラ放出したりも練習したら出来るかもしれないけど。

色々長くなったけど、そう、つまり言いたいのが……私は日本人のまま、昔の体のまま、この世界に生まれてきたんじゃないだろうか。

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